個人情報を記した乗車証まで…なくしたことを隠す母【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
社会福祉士の川島豊輝さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.最近母(77歳)がよくものをなくすのですが、そのことを私たち家族に隠します。先日は住所や電話番号が書いてある高齢者優待のバスの乗車証を1カ月以上前になくして放置していたことが発覚しました。なくすのは年だから仕方ないと思いますが、隠されるのは困ります(49歳・女性)
A.個人情報が書かれているような大事なものをなくされると、家族としてはイライラしてしまいますよね。ただ相談者から見た世界だけでネガティブにとらえると、「なぜなくすの?」「なぜ隠すの?」とお母さんを責めることになってしまうかもしれません。
お母さんから見た世界は、どうでしょうか。例えば、乗車証はお母さんにとって大切なものだったのでしょうか。ただの紙切れのような認識だったのでしょうか。大切なものでなければ、なくしたとしても特に気にせず、わざわざ家族にも報告しませんよね。逆に大切にしていたからこそ、なくさないようにしまいこんで、どこにしまったのかがわからなくなっているのかもしれません。乗車証に記してある字がお母さんにとっては小さすぎて、何が書いてあるのかわからないということも考えられます。まずは、お母さんのことをよく観察して、お母さんから見た世界を想像してみると、それに合わせた対応が見えてくるのではないでしょうか。
高齢になると、大事な情報とそうではない情報の選別が難しくなる傾向があります。例えば郵便物にはダイレクトメールなども複数混ざっていることがあるので、どれが必要でどれが不要なのかを選別するのは、なかなか難しいことです。
よかったらお母さんには「郵便物やカード類はここに置いてね」と伝えるのはいかがでしょうか。要不要の選別は家族がされるといいかなと思います。
「最近よくものをなくす」ということですが、どれくらいの頻度で何をなくしているのでしょうか。日常的に使用している財布やメガネなどを頻繁になくすようであれば、認知症の初期症状の可能性もあるので、早めにかかりつけ医に相談したほうがいいかもしれません。しょっちゅう探し物をしていないか、それによって笑顔が失われていないかなど、よく観察してみてください。
家族がイライラしてお母さんを責めるような言葉をかけると、大事なものを盗まれたと訴える「もの盗られ妄想」につながることもあるので、グッとこらえてほしいと思います。こらえてばかりではストレスがたまってしまうので、地域の介護家族の会などに参加するなど、愚痴を吐き出せる場があるといいですね。
【まとめ】大事なものをよくなくす母。なくしたことを隠されて困るときには?
- お母さんのことをよく観察して、お母さんから見た世界を想像してみる
- 郵便物など要不要の判断が難しいものは、置き場所だけ決めて家族が選別する
- 日常的に使用するものを頻繁になくすようであれば、認知症が疑われるのでかかりつけ医に相談する