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突然、遺産の多くは姉にと言い出した母 納得できない【お悩み相談室】

遺言書
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社会福祉士の川島豊輝さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.独身で一人暮らしをしていましたが、両親が高齢なので同居することにしました。姉が同じ県内に住んでいて、先日母から、姉のところは子どもが3人いてお金がかかるから、遺産はなるべく姉のところに渡したい、と言われました。以前は等分と話していたのに、なぜ突然母の言うことが変わったのか、なぜ同居までした私が損をするのか、納得できません(48歳・女性)

A.お気持ちはよくわかります。ただお母さんの立場で考えると、相談者とお姉さんだけではなく、孫3人も大切な家族であるという感覚ではないでしょうか。大切な家族みんなに遺産を渡したいというのは、自然なことだと思います。相談者にとっては突然のことでも、お母さんはずっと考えていたのではないでしょうか。

あくまで臆測ですが、お母さんが一番心配しているのは、相談者のことかもしれません。自分たち夫婦がいなくなったあと、1人で生きていくことになるかもしれない相談者の支えになるのは誰か。例えば相談者に介護が必要になったときに、頼りになるのは姉の子どもたちかもしれない。相談者が世話になる可能性がある姉の子どもたちに、遺産を渡そうと考えているのかもしれません。親はいつまでも子どものことを案じるものです。お姉さんの家をひいきにしているわけではなく、相談者への愛情による発言だったかもしれないと考えると、相談者の気持ちが変わる部分もあるかもしれませんね。

そうした可能性を理解したうえで、「姉の子どもに世話になる気はない」「1人で生きていくからこそ、お金が必要」という思いがあれば、それを主張していいと思います。こうしたお金の話は、お母さんだけに伝えるのではなく、お姉さんやお父さんもそろっているところですることをおすすめします。誤解を生まないためにも、家族みんないるところで、それぞれの思いなどを伝え合うのがいいと思います。

ご両親は高齢ということなので、今後介護が必要になってくるかもしれません。納得がいかないまま介護をするのはつらいものです。お母さんは相談のつもりで話しただけかもしれませんし、一度家族で話し合ってはいかがでしょうか。

また、今後ご両親に介護が必要になった場合、それにかかった費用は、領収書を保管しておくことも大事なことです。相続の際にはその費用を請求できます。

遺産の話が自然にできるのは、すてきな親子関係だと思います。これを機に話を進めると、相談者自身のこれからの生き方を考えるきっかけにもなるかもしれません。

【まとめ】母が姉のところになるべく遺産を渡したいと言い出した。なぜ同居までして損をするのか納得がいかないときには?

  • 同居してくれている独身の娘を案じての言葉であるかもしれないことを理解する
  • 納得がいかない点など、お金に関する自分の主張を家族がそろっているところで話す。
  • 介護にかかった費用は領収書を保管しておくと、相続の際に請求できる

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