長年の友を亡くした父 趣味もせず引きこもり心配です【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
社会福祉士の川島豊輝さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.ゴルフが趣味の父(78歳)。いつも学生時代の仲間とコースに出ていたのですが、その仲間が急逝したり、体調を崩したりで、ゴルフに行けなくなってしまいました。どうせコースに出られないからと練習もせず引きこもり状態です。引きこもると認知症になりやすくなると聞くので心配です(53歳・女性)
A.確かに心身の健康のために、お父さんが引きこもらないようにしていきたいですね。無理に外に連れ出すというよりは、お父さんの意思で外に出られような工夫ができるといいと思います。
そこで考えていただきたいのが、お父さんにとってゴルフはどんな意味をもっていたのかということです。ゴルフというスポーツが好きだったのでしょうか。それとも仲間とのつながりを確認する場だったのでしょうか。またはゴルフ場という日常から離れた場所で気分転換したかったのでしょうか。自分のスイングを人に見てもらい、それをほめてもらうことに意味を感じていたのかもしれませんし、練習次第でスコアがよくなっていくのが楽しかったのかもしれません。お父さんがゴルフに感じていた意味をていねいに聞き出すことで、お父さんが引きこもりから抜け出すヒントが得られるのではないかと思うのです。
例えばお父さんにとってのゴルフは、学生時代の仲間と会うことが目的であったのなら、地域でやっているゲートボールなどに参加を促しても、おそらく行かないでしょう。そこには、お父さんがゴルフを通して得ていたものがないからです。逆にゴルフで得ていたものがその場にあれば、行くのではないかと思います。体調を崩している仲間の見舞いに誘ってみることも、外に出るきっかけになるかもしれません。
いずれにしても、今のお父さんは喪失体験によって心がしぼんでいるような状態だと思います。亡くなった仲間との関係や思い出話を聞き出すだけでも、お父さんの気分は変わるのではないでしょうか。「本当に仲良かったんだね」「会えなくてつらいね」と相づちを打ちながら、とことん話を聞いてあげることが家族にできることだと思います。
引きこもりが長引くと、うつ病や認知症なども心配です。「明日の朝起きても、やることがない」など生きる意味が失われていくと、生活リズムが狂っていきます。食べる量が減ってきた、朝なかなか起きてこないなど、生活リズムに変化があったら、一度受診することをおすすめします。
【まとめ】ゴルフが趣味の父。ゴルフ仲間が急逝したり体調を崩したりして引きこもり状態のときには?
- お父さんにとってゴルフがどんな意味をもっていたのか、本人から聞き出すなどして考える
- お父さんがゴルフを通して得ていたものがありそうな場に行くことを提案してみる
- 急逝した仲間との関係や思い出話などをお父さんからとことん聞き出す
- 生活リズムに変化があったら、病院を受診する