認知症とともにあるウェブメディア

今日は晴天、ぼけ日和

「いつも笑顔」の裏側にあるもの 過剰な気遣いさえ包み込む優しさ

《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

笑う人

私は笑顔でいると、決めた。

だって、みんな安心するでしょう?

「こ、こんにちは。あの、私・・・近所の田中です。わかります?」

認知症と診断された私に、
みんな戸惑っている。
その小さな不安が私には、わかってしまう。

困らせたいわけじゃないのに。

「こんにちは田中さん」

あなたにも笑っていてほしい。
だから私は決めた。

笑顔でいることを。

「私が笑っていたら、みんな安心するでしょう?」

認知症当事者の方が
つぶやきみたいに口にしたフレーズを、
今でもふと思い出します。

それはさりげなくも、
その人の決意でした。

普通だったら笑顔なんて出ない、
不安だらけの日常に、
その方が生きているのを私は知っていました。

当事者ではない私たちは、
認知症があるご本人に
どう関わろうか、と考えることが多いでしょう。

でも実は当事者の方々こそ
我々を思いやってくださっていると
私は感じています。

そしてときには
こちらの過剰な気遣いを、
やさしく笑って、許してくれていると。

「あの人は認知症があるのに、いつも笑顔ですごい」

それはよく聞く話ですし、実際、私も元気を頂きっぱなしです。

でも、その笑顔の奥には
当事者の方の優しさと決意があることを、
忘れたくないものです。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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