完璧主義の母 もの忘れをしても認めてくれません【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
社会福祉士の川島豊輝さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.完璧主義でしっかりしている母(75歳)ですが、最近もの忘れがひどくなってきました。指摘すると自分の非を認めず、父や私など、人のせいにします。自覚があればメモするなど対応できると思うのですが、自分に絶対の自信があり、困っています(45歳・女性)
A.お母さんは、以前とは違う自分に怖さや不安、とまどいを感じているかもしれません。人のせいにするのは、その裏返しであり、一生懸命自分を守っているのではないでしょうか。
まずはそうしたお母さんの気持ちを思いやり、関わり方を調整していくことが必要ではないかと思います。もの忘れについては、「忘れている」ととらえるのか、「覚えていない」ととらえるのかによって、お母さんに対する言葉が変わってくるものです。例えば忘れているととらえると、夕食を終えたあとに「夕ごはんはまだ?」と言われると、「さっき食べたでしょ!」など、思い出させようとする言葉になりがちです。するとお母さんはもの忘れを指摘されたと感じ、プライドが傷つけられ、怒ってしまうかもしれません。覚えていないととらえれば、「まだおなかが空いているのかな?」と考え、言い方や関わり方も変わってくると思います。家族の関わり方が整ってくると、人のせいにするようなお母さんの態度も変わってくるかもしれません。
認知症の診断を受けていなければ、原因疾患などを調べてもらうためにも、一度受診することをおすすめします。お母さんの性格から考えると、スムーズに受診してもらうのは難しいかもしれませんが、本当はお母さん自身、自分に対しておかしいな、変だなという感覚はあると思います。その感覚に寄り添い、「最近おかしいと感じない?」「不安を感じていない?」といった声がけから始めると、抱えている苦しみを話してくれるかもしれません。
それでもお母さんが自分の変化や不安を認めないのであれば、相談者だけでも病院に言って医師に相談したり、認知症カフェなど介護に精通した人がいる場に参加したりして、関わる人を増やしていくといいと思います。そうした中でお母さんの話をじっくりと聞いてくれるような人と出会えるといいですね。お母さんも家族には本当の気持ちを言いづらいけれど、第三者になら話せるということもあるでしょう。
完璧主義なお母さんにとって、認知症は最もなりたくない病気かもしれません。もし診断されたら、「大丈夫だよ」とお母さんが安心できるような声かけを続けることが、家族としてできる大切な関わりだと思います。
【まとめ】もの忘れがひどくなってきた母。完璧主義で自分の非を認めず、人のせいにするときには?
- お母さんは「忘れた」のではなく、「覚えていない」のだととらえて、もの忘れを指摘しない
- 認知症の診断を受けていなければ、原因疾患を調べてもらうためにも、一度病院を受診する
- お母さんは自分の変化を感じて、不安になっているかもしれないので、その気持ちを聞き出す。難しければ第三者の力を借りる