祖母が認知症かも?同居する母は病院へ連れて行きません【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
社会福祉士の川島豊輝さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.両親が祖母(88歳)と3人で暮らしています。最近祖母が同じ話を何度もするようで、認知症が始まったのかもしれません。受診をすすめたのですが、母は「もう年なんだから仕方ないわよ」と病院に連れて行こうとしません。このまま放置していいのでしょうか(35歳・男性)
A.確かに88歳だと「仕方ない」となってしまうのもわかります。とはいえ、相談者が考えている通り、受診したほうがいいと思います。理由は主に二つあります。
一つは、同じ話を何度もすることが、本当に認知症によるものなのかどうかを診断してもらう必要があるからです。どんな話を繰り返すのかにもよりますが、気になっていることがあって、それを確認するために何度も同じ話をするというケースもあります。例えば曜日を気にして「今日は何曜日?」と何度も聞くようであれば、人との約束があり、それを忘れないように繰り返し聞いている可能性もあります。もしくは、お母さんに話したいことがあるけれど、言い出せずに会話のきっかけとして同じことを何度も聞くのかもしれません。
もう一つの理由は、おばあさん自身が困っている可能性があるからです。認知症であれば、忘れていくことに対して不安感や恐怖感があるかもしれません。そうであれば、早めに対応してあげたほうがいいですよね。
お母さんは「仕方ない」と言っていますが、もしかしたら自分の子どもに心配させまいと思っての発言かもしれません。「何度も同じ話をされてイライラしない?」「大変だと思うけど、どう?」というように、お母さんがストレスを抱えていることを前提に話をしてみてはどうでしょうか? そして「このままだとおばあちゃん自身もつらいかもしれないから、病院に連れて行こうよ」といった流れで提案してみるといいと思います。
まずはかかりつけ医に相談するのがいいと思いますが、おばあさんを連れていくという形ではなく、事前に医師におばあさんの最近の様子を伝えておいてもいいでしょう。
受診の前に考えておいてほしいのが、もし認知症だった場合に本人に告知するかどうかということです。おばあさんが困っているのであれば、認知症という病気だと知ることで安心するかもしれません。逆に病気だと知って不安が強くなるというケースもあります。おばあさんがどちらに当てはまるかは、普段の様子から推察するしかありませんが、家族で話し合って決めておくといいでしょう。
認知症と診断されたあとは、今後の準備が大事です。お母さんがおばあさんの実の娘なのか、嫁の立場なのかによっても変わってきますが、おばあさんの認知症が進んで大変になっていくのはお母さんである可能性が高いですよね。介護保険サービスについて調べるなど、ケアにつながる準備をすることは相談者にもできることだと思います。
早めに対応することで、おばあさんの不安、お母さんの負担が少しでも軽減するといいですね。
【まとめ】88歳の祖母が認知症かも。母は「年だから仕方ない」と言うけれど放置してもいいの?
- 認知症と決めつけないこと。医師に診断してもらうことが大事
- 母がストレスを抱えていることに配慮しつつ「このままだとおばあちゃん自身もつらいかもしれない」と医師に診断してもらうことを母にすすめる
- 認知症だった場合に本人に告知するかどうかを事前に決めておく