羽を伸ばすことをせめないで 明日のために介護者にも小休止が必要
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
ショートステイに、母を送りだした。
でも、今日からが本番。
たまりにたまった家のこと、
一気に片付けなきゃ!
なのに。
君も行っておいで、と夫。
理解ある彼に、私が送り出されたのは…
近所のホテルに、私もショートステイ。
家を離れて、ようやくわかる心の疲弊。
つかのまの現実逃避は、
明日からの一歩のため。
「あそこの奥さん、
お母さんを施設に預けて、ご主人もおいて、
ひとりで羽を伸ばしに行っちゃったのよ」
以前はそんな陰口を、たまに耳にしました。
それだけ世間には
「家の中のことは、女性が背負って当然」
という風潮がありました。
在宅介護は、逃げ場がないと言われます。
それはいまだ女性が
家事全般を担いながら、
主な介護者とならざるを得ない状況が
多くの世帯にあるからです。
逃げ場がない原因は、
介護そのものだけに、あるわけではないのです。
特に、ご自身の父母を介護している女性介護者の場合、
「夫に申し訳ない」と、
家事まで完璧に行おうとする方もいらっしゃいます。
だからこそ、
介護者がご自身の静養のために、
ひとたびでも家を離れることは、
とても大切です。
ホテルステイは難しくとも、
カフェにいく、映画に行く、銭湯にいく。
介護者が逃げ場所をたくさん作っておき、
家から離れることは、
心身の疲弊に正しく気づくためにも、
絶対に必要だと、私は思います。
ショートステイの目的は、
介護者の休養も兼ねています。
介護だけでなく、家事の解放があって、
真の休養、となるのではないでしょうか。
それにはショートステイだけでなく、
介護者の周りの方々のサポートが必要です。
ケアをする人をケアすること。
それは介護者が置かれた心境を
周囲が理解することから、
始まるのかもしれません。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》