認知症とともにあるウェブメディア

仲間と一緒に輝き続ける

お互いさまの想い

この日は、雨で急いでいたため、写真を撮り忘れてしまいました。今回は、普段から優しさがあふれているメンバーさんを撮影した写真をお届けします。信頼関係とフラットな関係性から笑顔が生まれます。なかまぁるは、それぞれの「私」が、自分らしく生き続けていくための情報をお届けします。この連載は、東京都八王子市のデイサービスで、認知症当事者スタッフとして働く、さとうみきさんが綴るエッセイです
この日は、雨で急いでいたため、写真を撮り忘れてしまいました。今回は、普段から優しさがあふれているメンバーさんを撮影した写真をお届けします。信頼関係とフラットな関係性から笑顔が生まれます。

こんにちは、さとうみきです。
近年、秋らしさを肌に感じる前にあっという間に寒さを感じるような気がします。
日が短くなり、DAYS BLG! はちおうじ(以下、BLG! はちおうじ)を後にするころには、外は暗く寂しさも感じます。

認知症になって四季の感覚が、「暑い」「寒い」の二つだけになってしまったのだろうか…。
一年を通して、大好きで過ごしやすい季節である秋の記憶があいまいになっているような感覚があります。

今季一番とも思われる寒く冷たい雨の日の日でした。
雨のため、洗車活動はお休み。

腰の調子が良いときは、積極的に洗車活動にも参加されます
腰の調子が良いときは、積極的に洗車活動にも参加されます

小雨の時間に地域新聞のショッパーのポスティング(配布)をし、
昼食は、温かいモノが食べたいとの希望で「具だくさん豚汁」に決定!
そこで、ポスティングチームと買い物チームに分かれ、
わたしは買い物チームに同行いたしました。

買い物を終え、BLG! はちおうじへ戻ると、
手分けをして、それぞれに合ったやり方で、野菜切りなど調理を進めていきます。
豚汁とは別にお弁当も用意していましたが、
みんなで作った豚汁の味は格別!
「いただきます!」の後には、みんな一斉に
「あー、おいしい!」と連呼しながら豚汁を完食しました。

午後の活動は、残りわずかなショッパーの配布をするチームと、
大量に注文が入っていた駄菓子の仕入れに行くチームに分かれました。
わたしは駄菓子チームに同行しました。

メンバーさんが商品名を声に出しながら駄菓子を探す様子は、ちょっと難しい宝探し。
買い物カゴ5個分の仕入れを終え、
メンバーさんはスタッフとともに、駐車場までの道を
「腰が痛い」と言いながらも笑顔で歩いていました。

わたしはふと自分が持っている袋の方が軽いことに気づきました。
メンバーさんは、かなり重たいはず…。
「腰を痛めちゃうので、わたしの袋と交換しましょう!」
すると、「何を言っている。女性に重たい荷物を持たせるなんて出来ないよ」

わたしは車に到着すると、車内のスペースを開けて、
「こちらに置いて下さい!」と声をかけました。
そのとき、重い荷物を持ってくれていたメンバーさんの顔が、
一瞬、曇ったので、もう一人のメンバーさんに対して「お前も手伝って!」と、
そんな言葉を投げかけるのでは……と心配しましたが、不要でした。
もうひとりのメンバーさんは、空間認知機能障がいのため、
足元に気をつけながらゆっくりと足を進めていました。

「あ、彼は足元が大変だから俺がやるからどいてくれよ」
そう言って、まずは、自分の重たい荷物をやさしく車内のスペースに置きます。
「ご苦労さまです! 助かります! ありがとうございました!」
腰をかばう様子があり、気にかけて問うと「大丈夫だよ」とチカラ強い笑顔が返ってきました。

そして、もうひとりのメンバーさんに歩み寄り、荷物を代わりに持ちました。
ふと、荷物を手放したメンバーさんは何か言いたそうな表情をしましたが、
自分に代わって他のメンバーさんが重い荷物を持って下さったことには、気づいていなかったように思います
けれど、それが、お互いさまの優しさなのだと気づかされ、わたしは優しい気持ちになりました。

メンバーさんの撮影にカメラマンさんが見え、車椅子をさりげなくサポート
メンバーさんの撮影にカメラマンさんが見え、車椅子をさりげなくサポート

重い荷物を持ってくれたメンバーさんは、今年からBLG! はちおうじに参加されたメンバーさんです。

最初の体験のときから比べて、とても安心して穏やかな表情に変化しました。
いつも相手を思いやる気持ちのある方です。
ここでは、いつも積極的に笑顔で活動に取り組まれていますが、
以前のデイサービスでは気が立ってしまうことが度々あったとのことです。
そんな様子は今では全く見られません。

認知症になって、それぞれに違う症状があっても
仲間とともに「役割」がある。
必要とされ、任され、守られる安心感があると、やはり違ってくるのでしょう。

BLG! はちおうじには、「ただいま〜」「おかえり〜」と言い合える、
当たり前のフラットな関係性と安心感があります。
そして、大切なひとを想い、頑張れる居場所がある。
「お互いさま」の関係が居心地良いのだろうなぁ。

メンバーさんにとっても、当事者スタッフとしてのわたしにとっても
BLG! はちおうじが、そして地域としての八王子市が、心地良い居場所であり続けて欲しいと思います。

優しさがあふれている一枚です

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア