認知症の母の微妙な気配の変化 でも、かけがえのない存在は変わらない
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![人の顔](http://p.potaufeu.asahi.com/32b8-p/picture/26442504/f333aa852838e38257df4c16f995d1c1.jpg)
いつの日からだろう。
母の顔から、母らしさが抜け落ちた。
「認知症が進んだから」と医師は言う。
![「ふたつの顔」](http://p.potaufeu.asahi.com/ddc5-p/picture/26442509/c4f1ce3e7e054b3cdcd0cca5d7d049ae.jpg)
寂しい、苦しい、悲しい。
一体、母からなにが失われたのか、
私は言い当てられない。
だってそれは、
母を思う時に浮かんでいた
気配みたいなもの。
![微笑むひと](http://p.potaufeu.asahi.com/4124-p/picture/26442510/7bac8adc1cd2253104e3fe54f6db2608.jpg)
それでも母はそこにいる。
私がいるかぎり、
決して失われない、いとしい気配。
認知症が進み、
それまでの雰囲気が変わる方がいらっしゃいます。
表情や声のトーン、ちょっとしたしぐさ。
そういった微妙な変化は、
直接の生活の不便には、
つながらないかもしれません。
が、傍らにいる方にとっては、
今までのその人が失われたかのような
言いようのない寂寥(せきりょう)感が伴います。
やるせない現実ではありますが、
その変化に気づけるのは
共に生きてきたからこそ。
その人だけがまとっていたものを、
覚えていてくれる人がいるのは
どんなにかけがえがないことでしょうか。
当事者、
そして傍らにいる方にしかわからない、
繊細な部分です。
せめて第三者であれば、
「お母さん、少し変わった?」などと
不用意に声をかけないようにしたいものです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)