もめない介護

うっせぇわ!おせっかいも時代が変わればハラスメント もめない介護133

紅葉狩り
コスガ聡一 撮影

「自分の親でもないのに、どうして介護のキーパーソンをやってるの?」
「実の子どもがいるんだから、任せておけばよかったのに」

義両親の認知症介護のキーパーソンをやっていると話すと、時々そんなふうに言われることがあります。たしかに、引き受けた時点ではさほど覚悟があったわけではありません。長女特有のおせっかいモードが炸裂したうえでの“うっかり”に近かったのですが、同時に、「実子のみなさんだけでどうぞ」と突き放せなかったのには理由があります。

結婚してから10年近く、義父母と会うのはせいぜいお正月ぐらい。あとはまったくのノータッチで、嫁らしい振る舞いを求められたことは一度もありませんでした。“子どもがいないこと”に対しても、催促はもちろん、どういうつもりなのかと問いただされたこともありません。43歳で大学院への進学を決めたときは、手放しで喜んでくれました。

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40代で大学院に進学すること自体は、そう珍しいことではありません。でも、子どもがいない既婚女性が進学すると、思わぬところから矢が飛んでくるということも進学してから知りました。親兄弟から「大学院に進学するより、子作りを考えたらどうなの!?」と愚痴られたり、陰口を言われたり、面と向かって文句を言われたりするらしいのです。

うっせぇわ! 以外の何ものでもありません。でも、言われると無傷で聞き流すのも難しい。だからこそ、ただただ祝福してくれた義父母に心から感謝していたし、そんな義父母が認知症だとわかったとき、知らんぷりもできず、えいやと介護の荒波に飛び込んでしまったという経緯もありました。

おばあちゃんが大好きな孫たちに、義母が吐く余計なひとこと

私にとってはリベラルでモダン、古いしがらみを感じさせない義父母でしたが、義母に関しては、真逆の顔も持っていました。

「あの子(義姉)が家を買うと言った時に、やめさせるべきだったのよねえ」
「娘はもっと近くに住まわせておくべきだったわね」

いやいや、おかあさん、いくら母と子でもそこは命じる筋合いはないのでは! 思わずツッコみたくなるようなセリフをしれっと口にすることもありました。さらに、孫(義姉の娘)たちに対しても、ちょいちょいハラスメント発言を繰り出します。

社会人になりたてホヤホヤの孫をつかまえて、「ねえ、あなた、いい殿方はいないの?」と恋人の有無を探ろうとするのは序の口。お孫ちゃんが苦笑いしながら、「いまは仕事を覚えるのに一生懸命なので……」と答えても、引き下がる義母でありません。

「だってあなた、いくつになるの? 20代のうちにいい人を見つけないと、市場価値が下がっちゃうわよ」
「結婚なんて、えり好みするものじゃないわよ。早く決めないと!」
なんて言い出すのです。

さすがに、それはないだろう!と思い、「おかあさん、それはちょっと……」と声をかけると、ますますヒートアップ。その気合いはどこから来るのか!

お孫ちゃんたちは、おじいちゃんおばあちゃんが大好き。義父の入院にともない、義母が有料老人ホームに緊急入所し、精神状態が不安定になったときも、一緒にフォローしてくれました。その後も一緒にお墓参りに行ったり、施設に手紙を書いてくれたり……と、ずっと気にかけてくれています。そんな彼女たちに対して、おかあさんたら、もう!!! 私がやきもきする筋合いの話でもありませんが、どうにも聞き流せない!

そこで、なんとか義母の時代錯誤プレッシャーを回避あるいは緩和すべく、作戦を考えました。

(1)「時代が違います」

最初に試したのは「時代が違う」を強調して伝えることです。

「おかあさんの時代には全員が20代半ばで結婚したかもしれませんが、いまは違うんですよ! 時代の変化って面白いですねえ。いまでは40代、50代で結婚する人もたくさんいるんですよ!」

義母は目を丸くしながらも、「あなた、ちょっと大げさに言ってるでしょ?」とも言っていました。鋭い!

(2)「私はここにいませんよ」

「結婚をせかして、ろくでもない相手と結婚したら、よっぽど大変ですよ」という話もよくしました。でも義母は納得がいかないようで、「だって20代のうちに結婚しないと、いいご縁がなくなっちゃうじゃない」とブツブツ。

お宅の息子さん、結婚した時30歳はとうに過ぎてましたけれども! ダメ元で「おかあさん、私が達也さん(うちの夫)と結婚したのは31歳のときですよ。20代で結婚してたら、ここにはいませんよ~~~!」と伝えてみると、「それは困るわね!」と即答。

「でもやっぱり、20代のうちに結婚しないと……」
「20代で結婚してたら、私はここにいませんよ」
このかみ合わない会話を続けるうちに、話があさってのほうにそれていくというのも、義母がお孫ちゃんに結婚のプレッシャーをかけ始めたときの定番の回避策になりました。

(3)「おかあさん、“ババハラ”です!」

上記の(1)(2)のアプローチをするとたいてい、義母の攻撃は弱まるのですが、時にはパワーアップしてしまうこともありました。

「こういうことはね、誰かが言わなくちゃいけないの。たとえ嫌われてもね!」と妙に張り切ってしまう瞬間があったのです。こうなるともう、義母は無敵モード。お孫ちゃんが優しく、苦笑いしつつも言い返さないのをいいことに言いたい放題。こうなったら最後の手段です。

「おかあさん、それはもう、最近はやりの“ババハラ”ですから!」
「ババハラ?」
「そうです。ババアハラスメント、略してババハラ!」
「あら、大変! はやっているの?」
「はやってます!」

なぜか義母は、キャッキャッとうれしそう。なぜ「ひどいわねえ。ババハラですって。ウフフフ」と喜ぶのか、そのメカニズムはよくわかりませんでしたが、「ババハラです!」と宣言すると少なくとも、しつこく結婚をせかす言動はストップしました。ポイントは笑いながら伝えること。そうすると、悪口っぽく聞こえないためか、義母にムッとされたことは一度もありませんでした。

うっせえわ!なセリフに出くわすと、最初は驚いて何も言えないで終わるかもしれません。それはそれでオッケー。笑って聞き流せるならオーライ。でも、心の中にざわつきが残るようなら、そこから目を背けず、ぜひ次の切り返しを考えてみることをおすすめします。

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