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TRFが昭和歌謡でダンス 高齢者と息を切らす【動画あり】

(撮影/吉田拓史)
(撮影/吉田拓史)

2021年6月26日、パシフィコ横浜にて「第10回日本認知症予防学会学術集会」が開催されました。会場の聴講者は三密を避けて100人とし、そのほかの参加希望者はライブ配信での聴講となりました。認知症予防をうたう第一人者、浦上克哉医師による講演「科学的に正しい認知症予防への理解と実践に向けて」のほか、市民公開講座では認知症予防大使である徳光和夫さんの特別講演、ダンス&ボーカルユニット「TRF」の3人と聴講者が一緒に踊るダンスコーナーなどあり、充実した内容となりました。

開会のあいさつは、鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野教授の浦上克哉医師。
「認知症予防についてのさまざまな情報が氾濫していますが、本講座では、正しい予防を理解、実践してほしい」

来賓あいさつでは、神奈川県知事の黒岩祐治さんからのビデオメッセージが流れました。
「認知症はある日突然発症するわけではなく、だんだんと進んでいくもの。早い段階で未病改善に取り組むことが大事」と話しました。

浦上医師による基調講演は「科学的に正しい認知症予防への理解と実践に向けて」がテーマに。
「日本認知症予防学会が発足して10年。認知症予防に関しては科学的データが乏しいという批判がありましたが、近年は科学的に根拠のあるデータが報告されるようになってきました。英国の医学雑誌『ランセット』に2017年に発表された報告では、認知症発症の危険因子のうち、修正可能な要因が35%あるというデータが示されました。たった35%と思う方もいるかもしれませんが、30年以上にわたって認知症の診療や研究に携わってきた私からすると、驚くべきことです。少し前までは修正可能な要因は0%と言われていましたから」

鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野 浦上克哉教授(撮影/吉田拓史)
鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野 浦上克哉教授(撮影/吉田拓史)

修正可能な危険因子は年代によって異なり、18歳未満は教育レベルの低さ、45~65歳は難聴、高血圧、肥満、65歳以上は喫煙、抑うつ、運動不足、社会的孤立、糖尿病だそうです。
「中年期の危険因子は肥満ですが、老年期になると肥満の人は少なくなっていきます。中年期に肥満解消のために有酸素運動をとり入れるのはいいですが、やりすぎると脂肪と一緒に筋肉量を落としてしまうこともあります。筋肉量の低下は、老年期になると骨折のリスクを高めることに。危険因子が年代によって異なるということは、行うべき予防法も年代によって異なるということなのです」

認知症予防に関するさまざまな情報が氾濫している現状をふまえ、日本認知症予防学会では、認知症予防の方法が、科学的に正しいのかどうかを認定するエビデンス認定を実施。グレードを特AからCに分けて認定しています。

「人との間隔をあける、会話や外出、対面を控えるといったウィズコロナの生活様式は、認知機能の面からみたら悪い生活様式です。感染予防と認知症予防を両立させ、感染予防をしながら本講座のように直接会う機会をつくることも大事だと思っています」

昭和のヒット曲に合わせた「リバイバルダンス」をTRFがレクチャー

特別講演では、フリーアナウンサーの徳光和夫(80歳)さんがご家族の話を中心に、実践している認知症予防について講演しました。徳光さんの妻は、2年ほど前から昔の思い出話を何度も繰り返すようになったと言います。

アナウンサー徳光和夫さん(撮影/吉田拓史)
アナウンサー徳光和夫さん(撮影/吉田拓史)

「私はいつも初めて聞いたような感じで対応しています。アナウンサーの仕事は、ゲストを迎えて相手の話を引き出すこと。そのために、いろいろな質問をします。妻にも同じ内容の話を毎回違う角度から質問して、話を聞き出しているんです。すると会話が弾んで、私も楽しくなるし、同じ話でも新鮮に聞けて、家庭が明るくなります。会話がいかに大事か、妻のことがあって改めて実感しました。こうした経験やアナウンサーの仕事を生かして、これからも“おしゃべり”の世界で認知症に関わっていきたいと思っています」

TRFのSAMさん、ETSUさん、CHIHARUさんの中に徳光さんも加わりダンスに挑戦(撮影/吉田拓史)
TRFのSAMさん、ETSUさん、CHIHARUさんの中に徳光さんも加わりダンスに挑戦(撮影/吉田拓史)

ダンスコーナーでは、ダンス&ボーカルユニット「TRF」のメンバーで、ダンスクリエーターのSAMさん、ETSUさん、CHIHARUさんが登場。日本認知症予防学会の専門医が監修に加わって開発された「リバイバルダンス」をレクチャーしました。リバイバルダンスは懐かしのヒット曲に合わせて考案されているのが特徴で、この日使用したのは、美空ひばりの『お祭りマンボ』。
「どんどん間違えていいですからね」とSAMさんに励まされながら、聴講者が振りつけを覚えていきます。徳光さんも「覚えると快感ですね」と一緒に踊り、会場が一体となりました。

【動画】TRFの3人が市民に向けて「リバイバルダンス」をレクチャー。会場と一緒になってダンスする様子

最後のトークショーには、浦上医師、徳光さん、TRFのメンバー3人が登壇。リバイバルダンスの感想などを語り合いました。
「実はリバイバルダンスのワークショップを自分たちが開催するのは、今日がはじめて。みなさんよく知っている曲なので、口ずさみながら踊る方もいて、楽しそうでよかったです。みんなで踊るとポジティブな気分になれることも実感できました。今後も自治体や企業と一緒にワークショップをやっていくので、どんどん参加してほしいと思います」(SAMさん)
「踊り終わってハイタッチされている方もいて、こちらが元気をもらえました」(ETSUさん)
「小さいころからダンスをやってきましたが、ダンスが認知症に備える活動につながることを知って、ダンスをやってきてよかったなと思いました。健康寿命を長くするお手伝いができることがうれしい」(CHIHARUさん)
「リバイバルダンスは頭を使って、楽しく体を動かせるダンス。認知症予防に効果的な要素がつまっています。さらに懐かしい音楽によって昔のことを思い出し、楽しい気分になれる。TRFのみなさんにリバイバルダンスを普及してもらい、ぜひ本学会を助けてほしいと思います」(浦上医師)
「リバイバルダンスをやってみて、だんだん楽しくなってくるのを実感できました。私もいつ認知症になるかわからない。私は認知症予防として、コミュニケーションを楽しむことを啓蒙していきたいです」(徳光さん)

ソーシャル・ディスタンスをとりながらの開催ではありましたが、みんなで振りを合わせる楽しさを体感できるのは、現場に足を運んだからこそ。認知症予防についての理解を深めるだけではなく、実践までとり入れた実り多い公開講座となりました。

TRFのSAMさん
SAMさんコメント
トークショーの後、SAMさんが、リバイバルダンスの振り付けを考える際に工夫したことなどを語ってくださいました。
「昔なつかしい懐メロで、ご高齢の方が無理なくできる動きを考えました。なおかつ、ダンスなので多少は格好良さを残しておきたいと思いました。特に、僕がやっているのはストリートダンスなので、その良さをエッセンスとして入れつつ、楽しくできるようにしました。
運動強度(運動の強さ)もしっかりと考えていて、ラジオ体操やボーリング、ちょっと家で掃除をするといった運動と同じくらいの強度にしています。ご高齢の方にもすごく安全にやっていただけますし、有酸素運動なので無理なくできると思います。
認知症に詳しい先生方にアドバイスをいただいて、手を肩より上に上げる、体重をちょっと斜め後ろにかけるといった、認知症の予防に効果が期待できると考えられる動きも取り入れています。
僕らとしては、踊った後にみなさんが笑顔になってくれるのが、一番うれしい瞬間です」

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