もめない介護

ライフ介護バランス?訪問介護アリでも外出したい もめない介護121

扇風機
コスガ聡一 撮影

「今日うかがったらお父さまがいらっしゃらなくて、近所のスーパーにお買い物に行かれたというお話だったんですけれど……」

ヘルパーさんや訪問看護師さんから立て続けに連絡が入るようになったのは、2017年秋のことです。介護保険サービス導入直後は「お客様がいらっしゃるからもしれないから」と緊張気味で、ヘルパーさんや訪問看護師さんを待っていた義父母でしたが、数カ月も経つと慣れてきたのか、特に気にすることなく外出する機会が増えていました。

リラックスできるのはいいことだし、ぜひ自由にのびのびと暮らしていただきたい。でも、訪問してくれた時に義父母がそろって不在となると、ケアマネさんやヘルパーさんに待ちぼうけを食らわせてしまうことになります。それは避けたい……というジレンマ!
今回は、義父母の自由な暮らしと訪問系介護サービス利用を両立させるための工夫をご紹介します。

(1)A3サイズの週間予定表をリビングに掲示

訪問看護が週2回、訪問介護が週2回、通所リハビリが週1回から週2回に増え……と、利用回数が増えると、義父母の1週間の予定もどんどん立て込んできます。

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「どなたがいついらっしゃるのかわからなくて、おちおち外出もできやしないのよ」
そんな義母の愚痴をきっかけに、「かしこまりました!」と作成したのが、A3サイズの週間予定表です。エクセルで曜日ごとに「10時30分~11時30分 訪問看護」「16時~17時 ヘルパー」などと記載。文字サイズは最大限大きく、見ためもカラフルに各予定が見分けやすいようにしたものをA3サイズで印刷しました。

リビングに貼るとイヤがられるかなと内心ドキドキしつつも、しれっと壁に貼ってみたところ、「あら、いいわね」と義母から思いがけず、ご機嫌なリアクション。元学校教師の琴線に触れたのか、「時間割みたいでいいわね」と喜んでもらえました。

(2)週間予定表には「担当者」の名前も追記

「失礼がないように、どなたが来るのか、わかるようにしてほしいの」

週間予定表を作った直後、義母からリクエストがありました。もともとパソコンで作成したもので、データも保管してあるので作り替えるのもカンタン。問題は「日によって担当される方が変わることもある」という点ですが、そこは厳密に考えず、一応のメイン担当とされる方の名字を追記しました。

義母曰く「せっかく来てくださってるんだから、きちんと名前でお呼びしたい。そうしないと失礼でしょう?」。そう言いながら、ヘルパーさんを片っ端から「佐藤さん」「鈴木さん」と適当に命名して呼ぶのはご愛敬です。

名前で呼びたい気持ちと、実際に呼べるかどうかは別。また、名前を覚えられないからといってあきらめるかどうかも、また別の話でした。

気付けば、カレンダーには鉛筆書きで新しい名字が書き加えられています。どうやら“いつもの方以外”が来た時は名前を確認し、義父母がさらに書き加えてくれていたようなのです。時々違う筆跡もあり、聞くと「ヘルパーさんや看護師さんに手伝ってもらった」と言います。

どんどん情報が更新されて、週間予定表がブラッシュアップされていきました。

(3)歯科も訪問診療を利用

この連載でも紹介しましたが、介護が始まった時点で見つかった「かかりつけ医」の診察券は、義父母それぞれ10枚以上。内科や皮膚科、整形外科、泌尿器科とさまざまなクリニック・診療科にかかっていたのを訪問診療(老年内科)にまとめ、ひと安心したのもつかの間。今度は義父の歯科通いに悩まされることに。

当時、義父は「口内炎が痛い」「口の中に違和感がある」「歯に痛みがある」などなど、何らかのお口のトラブルに気付いたら、“思い立ったが吉日”で即受診を信条としていました。その日は訪問してくれる看護師さんやヘルパーさんを気にするどころではなくなります。

自宅から歯科まで迷子になることもなく往復できましたし、予約の電話もかけられます。ところが「次の予約」の記憶はスコーンと抜けてしまう。1回受診して痛み止めの薬をもらい、1~2日は薬をのむけれど痛みがやわらぐと忘れてしまい、治療が中断。またしばらく経つと……を繰り返していました。

これまでの歯科医との付き合いを気にする義父

そこで、ケアマネさんに相談し歯科も訪問診療を利用することに。ただ、義父は当初、訪問診療には後ろ向きでこんなやりとりがありました。

「これまでの先生とは長い付き合いだから……」
「通うのをやめる必要はないですよ!」
「それは、これまで通りいつもの歯科に通ってもいいということですか」
「もちろんです。訪問歯科は定期チェックが目的です。何歳になってもおいしく食事が食べられるようにするための“転ばぬ先の杖”ですから」

本音を言えば、訪問歯科に統一してほしい。“長い付き合い”といっても、いつも治療は中途半端になってしまうし、だからといって何かフォローがあるわけでもない。だったら、訪問歯科だっていいじゃん……! でも、これらはすべてこちら側の都合。義父には義父の思いがあり、こだわりがあります。

そのうち、新しい訪問歯科の先生に慣れて、「わざわざ通わなくてもよくて便利」と思ってくれたらラッキー。まずは、試してみようという気になってもらうのが先決です。

(4)待ちぼうけ事案が発生しても、とがめるセリフは封印

「ヘルパーさん(看護師さん)が来るから外出しないでください」「どうして約束したのに、出かけちゃったんですか」
などなど、責めるようなフレーズは一切合切、封印しました。

義父だけが出かけている時にヘルパーさんや看護師さんが来ると、「お父さまったらダメねえ。みなさんにご迷惑をかけて!」「ちゃんと予定を見てから出かけていただかないと」と義母が小言を並べたてる場面は時折ありました。義母が言う分にはオッケー。でも、ここで子どもたちが「困る」と伝えると話が変わります。

自宅でどのように過ごそうと、親の自由。その前提を無造作に踏みにじると、親からすればこんなにも理不尽で不愉快なことはないはず。

介護が必要になろうとなるまいと、親の暮らしは親自身のもの。ただし実際問題として、訪問系の介護サービス導入など親に妥協してもらわざるを得ない場面も出てきます。そんな時、尊重できる限り尊重している姿勢を見せておくと、親も気持ちの落としどころが見つけやすくなるのではないかと思うのです。

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