卒業でも別れでもない感覚に…

こんにちは、さとうみきです。
今回は、この気持ちを忘れたくはないと、
まだなんとも言えない寂しさの中で想いを綴ります。
DAYS BLG! はちおうじ(以下、BLG! はちおうじ)では、
一般的には「退所」と言われるメンバーさんとのお別れを
次のステージへ進むとの思いを込めて「卒業」と言っています。
そんな「卒業」を5月に迎えた若年性認知症のメンバーさんは、
「認知症マフ」の回でも登場して下さいました。

そのメンバーさんが「川がみたい」と希望する言葉をつぶやいたことから
最後の日の午後は全員で、高尾山のふもとにあるキャンプ場に渓流を見に行ってきました。
ひともいなく、密を避けながらのちょっとの散策。
スタッフの手を借りながら、川沿いまで降りることが出来たメンバーさんは、
冷たい川の水に触れていました。

川沿いまでは足場が悪く、近づけないメンバーさんもいます。
わたしは、冷たい水を溢れさせないように手ですくい上げ、
急いでメンバーさんのもとにかけ寄り、手に水をバシャバシャ!
メンバーさんは笑みを浮かべて「冷たいわね」

そんな風にメンバーさんに合った、川の水との触れ合いを終え
集合写真を撮って、駐車場に戻る最中のことでした。
いつものように、卒業するメンバーさんが、小さな声でお話をして下さいました。
わたしが足を止めて、メンバーさんに耳を傾けていると
「BLG! が楽しいです」
「BLG! を辞めたくないです…」
わたしは思わず、ハッとして後ろを歩いていたスタッフに伝え、
涙が流れ出るのを堪えました。

ご家族からいただいていたお手紙。
「皆さまのおかげで穏やかに過ごすことが出来たことに感謝…」
なのにどうして…
だからこそ、今回のメンバーさんは
わたしの中では勝手に「卒業」でも「お別れ」でもなく
「休止」と言った感覚です。
またBLG! はちおうじ付近をパトロールしながら、
扉をガラガラと開けて、いつものように自然と入って来られるのではないか…
また一緒に活動が出来るのではないか…

最後の振り返りの時間を終え、
メンバーさんにひと言をお願いしました。
なかなか発語が難しいながらも小さな声で
「お疲れさまでした」
一瞬、室内に沈黙が…
そして、みんなで元気に「お疲れさまでした!」と笑顔を交わします。
他のメンバーさんが帰り支度をする中
わたしが、メンバーさんに語りかけているときでした。
いつも隣に座って気にかけて下さっていたメンバーさんが話しかけます。
「同じ八王子にいるんだから、見かけたら声をかけるんだよ」
そう優しく声をかけながら、手を取り、手を重ねて包み込んでいました。
3人で少しの時間を語り合いました。
そんな姿をスタッフが写真に撮ってくれました。
わたしはメンバーさんの写真はたくさん撮るのですが、
そんなふとした瞬間の自分の写真がないので、
貴重で大切な写真になりました、

メンバーさんを玄関で見送り、掃除をはじめようとした瞬間
わたしはサンダルで駐車場に小走りで向かっていました。
メンバーさんを乗せた送迎車は走り出そうとしていましたが、
玄関先までゆっくり戻ってきてくれました。
わたしは、勢いよくドアを開けたかと思います。
上半身を車内に預け、こらえられない涙と想いを伝えました。
「辞めても同じ仲間。いつでも遊びに来て下さい」
「ひとりじゃないんですよ! 離れていても、みんなつながっています」
「色々とあるかと思いますが、お互いに乗り越えていきましょうね!」
そんな想いを伝えたときでした。
メンバーさんがわたしの手をギュッと握って下さいました。
「お互いに頑張ろう」と言って下さっているかのようにチカラ強く
そして、そのときの表情が、今でも頭から離れません…
それはまるで言葉が出なくても、ちゃんと感情があるということを託されたかのように。
しっかりと、その想いをわたしは受け止め、伝えていくことを約束しました。
さようならではなく、絶対にまた来て下さいねー!
そう手を振って。





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