卒業でも別れでもない感覚に…
![先発隊チームで記念写真。なかまぁるは、それぞれの「私」が、自分らしく生き続けていくための情報をお届けします。この連載は、東京都八王子市のデイサービスで、認知症当事者スタッフとして働く、さとうみきさんが綴るエッセイです](http://p.potaufeu.asahi.com/e213-p/picture/26314310/201e0b54ff6f53a7f4400269d3bfa6e8.jpg)
こんにちは、さとうみきです。
今回は、この気持ちを忘れたくはないと、
まだなんとも言えない寂しさの中で想いを綴ります。
DAYS BLG! はちおうじ(以下、BLG! はちおうじ)では、
一般的には「退所」と言われるメンバーさんとのお別れを
次のステージへ進むとの思いを込めて「卒業」と言っています。
そんな「卒業」を5月に迎えた若年性認知症のメンバーさんは、
「認知症マフ」の回でも登場して下さいました。
![「認知症マフ」も気に入って下さいましたねー](http://p.potaufeu.asahi.com/c3d5-p/picture/26314311/4bbeed73721fe285c8cd6b6e329ffe90.jpg)
そのメンバーさんが「川がみたい」と希望する言葉をつぶやいたことから
最後の日の午後は全員で、高尾山のふもとにあるキャンプ場に渓流を見に行ってきました。
ひともいなく、密を避けながらのちょっとの散策。
スタッフの手を借りながら、川沿いまで降りることが出来たメンバーさんは、
冷たい川の水に触れていました。
![涼しくマイナスイオンを感じながら](http://p.potaufeu.asahi.com/3389-p/picture/26314312/feac3f7f33b1fadf698517877073290d.jpg)
川沿いまでは足場が悪く、近づけないメンバーさんもいます。
わたしは、冷たい水を溢れさせないように手ですくい上げ、
急いでメンバーさんのもとにかけ寄り、手に水をバシャバシャ!
メンバーさんは笑みを浮かべて「冷たいわね」
![チームに加わってチーズ!](http://p.potaufeu.asahi.com/d16c-p/picture/26314313/05c6f224966c301705abaff8dcefaf6b.jpg)
そんな風にメンバーさんに合った、川の水との触れ合いを終え
集合写真を撮って、駐車場に戻る最中のことでした。
いつものように、卒業するメンバーさんが、小さな声でお話をして下さいました。
わたしが足を止めて、メンバーさんに耳を傾けていると
「BLG! が楽しいです」
「BLG! を辞めたくないです…」
わたしは思わず、ハッとして後ろを歩いていたスタッフに伝え、
涙が流れ出るのを堪えました。
![コロナ禍で手作りおやつが増え、お手伝いもありがとうございました!](http://p.potaufeu.asahi.com/53dc-p/picture/26314314/04e8f0a84531b9e684372179a7a466e6.jpg)
ご家族からいただいていたお手紙。
「皆さまのおかげで穏やかに過ごすことが出来たことに感謝…」
なのにどうして…
だからこそ、今回のメンバーさんは
わたしの中では勝手に「卒業」でも「お別れ」でもなく
「休止」と言った感覚です。
またBLG! はちおうじ付近をパトロールしながら、
扉をガラガラと開けて、いつものように自然と入って来られるのではないか…
また一緒に活動が出来るのではないか…
![午前中のポスティング活動、最後の一枚を投函](http://p.potaufeu.asahi.com/d186-p/picture/26314315/4cc5c1421887395d984a374619a33584.jpg)
最後の振り返りの時間を終え、
メンバーさんにひと言をお願いしました。
なかなか発語が難しいながらも小さな声で
「お疲れさまでした」
一瞬、室内に沈黙が…
そして、みんなで元気に「お疲れさまでした!」と笑顔を交わします。
他のメンバーさんが帰り支度をする中
わたしが、メンバーさんに語りかけているときでした。
いつも隣に座って気にかけて下さっていたメンバーさんが話しかけます。
「同じ八王子にいるんだから、見かけたら声をかけるんだよ」
そう優しく声をかけながら、手を取り、手を重ねて包み込んでいました。
3人で少しの時間を語り合いました。
そんな姿をスタッフが写真に撮ってくれました。
わたしはメンバーさんの写真はたくさん撮るのですが、
そんなふとした瞬間の自分の写真がないので、
貴重で大切な写真になりました、
![スタッフが撮ってくれた貴重な写真](http://p.potaufeu.asahi.com/849a-p/picture/26314316/30abae7d74dba845bd92c4426f55ec05.jpg)
メンバーさんを玄関で見送り、掃除をはじめようとした瞬間
わたしはサンダルで駐車場に小走りで向かっていました。
メンバーさんを乗せた送迎車は走り出そうとしていましたが、
玄関先までゆっくり戻ってきてくれました。
わたしは、勢いよくドアを開けたかと思います。
上半身を車内に預け、こらえられない涙と想いを伝えました。
「辞めても同じ仲間。いつでも遊びに来て下さい」
「ひとりじゃないんですよ! 離れていても、みんなつながっています」
「色々とあるかと思いますが、お互いに乗り越えていきましょうね!」
そんな想いを伝えたときでした。
メンバーさんがわたしの手をギュッと握って下さいました。
「お互いに頑張ろう」と言って下さっているかのようにチカラ強く
そして、そのときの表情が、今でも頭から離れません…
それはまるで言葉が出なくても、ちゃんと感情があるということを託されたかのように。
しっかりと、その想いをわたしは受け止め、伝えていくことを約束しました。
さようならではなく、絶対にまた来て下さいねー!
そう手を振って。
![メンバーさんと一緒に集合写真](http://p.potaufeu.asahi.com/2f4f-p/picture/26314325/281bbb9e1131858e848b733b6f2eeadd.jpg)
![肩を組み笑顔で、ハイチーズ!](http://p.potaufeu.asahi.com/2e5e-p/picture/26314317/01d9e06802fec0d0a8c378c2fc88bd5a.jpg)
![川沿いでメンバーさんと一緒に](http://p.potaufeu.asahi.com/3a64-p/picture/26314318/d0da003e162e2ce84d8e08d6b6e6e3ed.jpg)
![選手だったので、わたしが「走ってみましょー」と言うと駆け上がってきた姿はプロ!](http://p.potaufeu.asahi.com/af94-p/picture/26314326/dd252ac315f979268f065af5c79ceeaf.jpg)
![アプリでこんな事もしましたねー](http://p.potaufeu.asahi.com/4fcf-p/picture/26314324/6fa36172ab21f8b0300ec4059f7eda00.jpg)
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)