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認知症マフ みきちゃんバージョン

なかまぁるは、それぞれの「私」が、自分らしく生き続けていくための情報をお届けします。この連載は、東京都八王子市のデイサービスで、認知症当事者スタッフとして働く、さとうみきさんが綴るエッセイです。
仕上がりは黒く地味ですが、愛情たっぷり製作しました。

こんにちは。さとうみきです。

今回はネットで知った「認知症マフ」についてのエピソードです。
認知症マフ(*)はイギリス発祥で、認知症のご本人がこれに触れることで気持ちが落ち着くと、イギリスの介護施設などで実際に利用されているそうです。
(*編集部注:マフは筒状の防寒具で、両端からそれぞれ左右の手を入れて温めるものです)

わたしが「認知症マフ」を作ってみたいと思ったのは、
DAYS BLG! はちおうじ(以下、BLG! はちおうじ)に来ている、空間認知機能の症状がある女性メンバーさん(BLG! では利用者をメンバーと呼びます)が、最近 テーブルに手を伸ばして、テーブルクロスをこすっている様子やご自身の洋服の裾を常に握りしめている様子を目に留めたからでした。

時々、ふと不安そうな表情で手を伸ばしていることもあり、わたしや女性スタッフが優しく手を添え、握りしめたり、さすったりしています。

そんな時に交わしたスタッフとの会話から、ふと「認知症マフ」の存在を思い出し、
代表の守谷さんにも、「試しにつくってみて、ご本人が受け入れて下さったら、使ってみていただいてもいいか」と相談をし、OKが出たその日にすぐ、手芸屋さんなどをハシゴして材料を調達しました。

ネットで調べた本来の認知症マフは、毛糸で編んで作られていました。
わたしは子供の頃から母に編み物を教わったので、編み物の経験はあるのですが、今は、いちから編む自信がなく、だけどすぐに作りたい気持ちが強いので
ネックウォーマーを2枚購入し、つなぎ合わせた試作品をつくることにしたのです。

内側には、ボタンやリボン、ボンボンなどを付けています。手を入れて、この飾りを触るのが「宝探し」になるのです。

早速、自宅で作業を始めます。手芸屋さんで買ったボタンやリボンを裏側に取り付けるのはひと苦労でした。

その日は甥っ子も泊まりに来ていて興味津々で、
フワフワな生地にボタンをつける悪戦苦闘中の私を見ています。
そのうち、息子と甥っ子がサポートしてくれて、
老眼で糸を針に通せないわたしに代わって糸通しも手伝ってくれました。

息子たちは横でモノポリー中に、ボタン付けや糸通しを手伝ってくれました

できあがったのは、本来の「認知症マフ」とは、(たぶん)かなりかけ離れた、黒くて、見た目がかなり地味な試作品。

でもこれが今のわたしに出来るカタチ。
地味ですが、たっぷりの愛情と心を込めて製作しました。
そして…………
まだ飾りなどは完成していませんでしたが、メンバーさんにお試ししていただきました。

「マフ」のモフモフ感に慣れない様子でしたが
スタッフの岡田さんが片方から手を入れると、
一緒にモフモフした心地良さを確認。

お互いに手を入れている、
ステキな笑顔の写真を撮影することが出来ました。

マフの中は、お二人の手で宝物探し中。ステキな笑顔です

他の男性メンバーさんで、なかなかゆっくり座っていることが難しい方も
ハンカチをいつも握りしめているので、もしかして…と
マフのことを伝え、試して頂きました。

「どうですか?」
「はい!いいですねー」

そう言って下さり、ソファにゆっくり座って
しばらくの時間をマフに手を入れて落ち着かれ、リラックスされている様子でした。

男性メンバーさんはスムーズに両手を入れて、モゾモゾ手探りで宝物を触っていました

言葉でのコミュニケーションが難しい症状のあるメンバーさんが、
こんな風にゆっくりと腰かけているのは、お話できるチャンス!
さっそく横に座って、お互いの子どもの話などをしました。

ゆっくりながらも新たなお話を伺うことができて、とてもうれしさを感じました。

「認知症マフ」
わたしの考えは
ずっとご本人に使っていただくものではなく、
ふとした時、ご本人のココロの安定に少しでもつながるなら、いいのかなと。
うまく「マフ」のチカラも借りながらコミュニケーションを取れればと思っております。

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