認知症とともにあるウェブメディア

仲間と一緒に輝き続ける

優しさに包まれた仲間たち

車内で、男性メンバーさんは女性メンバーさんの冷たい手をずっとさすってくださいました。なかまぁるは、それぞれの「私」が、自分らしく生き続けていくための情報をお届けします。この連載は、東京都八王子市のデイサービスで、認知症当事者スタッフとして働く、さとうみきさんが綴るエッセイです
車内で、男性メンバーさんは女性メンバーさんの冷たい手をずっとさすってくださいました

こんにちは、さとうみきです。
今回は、DAYS BLG! はちおうじ(以下、BLG! はちおうじ)のメンバーさん同士が支え、支えられ、優しさに包まれる、ホッコリするエピソードです。

この日の活動はポカポカ陽気に恵まれ、午前、午後の活動は
全員一致で広告のポスティングに決まりました。

午前中には、わたしもコツをつかみ、作業もスムーズに進みました。
メンバーさんと一緒に知らない土地で、ちょっと迷子になりながらも
共に活動を進めることが出来ました。

気候も良く、散歩をしているかのように活動をしていると
いつの間にか、お昼ご飯の時間になっていました。
それほど楽しくポスティングをし終えました。

昼食、休憩後の午後も、続きのポスティング活動に取り組みました。

スタートして間もなくして、ある女性メンバーさんの体調が少し優れない様子であることに気づき、スタッフの代表に連絡しました。

いつもならば、この女性メンバーさんの横には、
みんなから「総理」と呼ばれている男性メンバーさんがいることが多いのですが、
生憎、この日は「総理」はお休みでした。
なぜ「総理」と呼ぶかと言うと、歴代の総理大臣の一人と同姓同名だからです。

車に戻る様子を後ろから見ていてホッコリ
車に戻る様子を後ろから見ていてホッコリ

他のスタッフとも合流し、BLG! はちおうじに戻ることになりました。
そんな時でした。

駐車場に戻る途中も、車内でも、いつもの「総理」に代わって
他の男性メンバーさんが、必死に女性に声をかけてくださっていました。

「みんながいますから大丈夫ですよ!」
「元気を出して下さいな」
「あなたは具合が悪くても伝えられないから…」
「足元に気を付けてくださいね」

そんな風に車に乗るまで声をかけてくれる男性メンバーさん。
涙を流しながらずっと手をさすって、女性メンバーさんをリードしてくださいました。

女性メンバーさんは確かに、空間認知機能障がいがあったり、言葉でのコミュニケーションが難しかったりする方です。

そして、女性メンバーさんの足元を気にかけてくださった男性メンバーさんにも視野狭窄があります。
ご自身の足元もゆっくりと進んでいく必要がある中で、
手をつなぎ、女性メンバーさんを車までリードされている姿を、
わたしはお手伝いをしながら「BLG! はちおうじらしい」とほほえましく思い、
ついつい写真に収めてしまいました。

男性メンバーさんは、BLG! はちおうじに到着されてもしばらく女性メンバーさんの手をさすってくださいました。

この女性メンバーさんは、確かに言葉でのコミュニケーションには難しさがありますが、
それでもいつも穏やかな笑顔でBLG! はちおうじを明るく照らしてくれています。

そして、メンバーさんみんなが、他のメンバーさんの苦手なことなどを
普段は言葉には出さないけれど、理解し、行動してくれます。
そうした仲間がいることを嬉しく思います。

この写真を「総理」がみたら嫉妬してしまうかしら?
そんな想いを想像してはホッコリし、わたしはパソコンに向かいこの原稿を綴りました。

BLG!はちおうじに到着後も気にかけて下さっていました
BLG!はちおうじに到着後も気にかけて下さっていました

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア