「認知症じゃない○○ちゃんがいい」 女の子とわたし:5
こんにちは、さとうみきです。
DAYS BLG! はちおうじ(以下、BLG!)には、玄関を入った所に小さな「駄菓子屋さん」があります。そこで出会った常連のお客様、小学3年生の女の子との交流を、全5回のシリーズで、お伝えしています。最終回となる今回は、私が、少しメンタルを崩して1週間ほどBLG! をお休みした後、仕事を再開した日のお話から始まります。
お休みが明けた日の仕事終わりに
元気よくいつもの女の子のAちゃんが入って来ました!
早速、女の子は
「ねー、何で休んでいたの?」
「ちょっと体調が悪くて、自宅で休んでいたのよ」
と、わたし。
「知ってるよ! みきちゃんが具合悪くて休んでるって聞いたもん!」
わたしは思わず
「あっ、みきちゃんに逢いたかったんだー?」
と、うれしい気持ちで言葉をかけてみました。
すると
「違うよ! ねー、○○ちゃんは?」
と、ほかのスタッフの女性を探し始めます。
わたしは
「今、メンバーさんの送迎に行ってるから
もうすぐ帰ってくるよ。久しぶりに何かして遊ぶ?」
そう女の子を誘うと…
「みきちゃんは認知症だから○○ちゃんと遊ぶ!」
わたしは自分の顔がこわばった感覚を覚えています。
「えー、なんで! そんな寂しいこと言わないでよ〜」
すると女の子が待っていたスタッフが戻ってきました。
つかさず、女の子はスタッフに駆け寄り
「○○ちゃん、今日は一緒に帰れる?」
わたしは思わず
「最近、一緒に帰ってるの?」
女の子は
「そう! 同じ方向だし、みきちゃんとは違う方向だから」
「えー、途中までみきちゃんとも一緒に帰ろ!」
「だから、みきちゃんは認知症だもん」
そっか…
わたしが休んだこの1週間で何が変わってしまったのか…
あんなにも「認知症」について、子どもらしくまっすぐ受け止めて
笑いあった時間があったのに……。
「みきちゃんは認知症だから…」の言葉に、
1週間休んでしまったことを悔やみました。
女の子とスタッフが仲良く同じ方向へ帰る様子が寂しくて
わたしは見送ることができませんでした。
きっと母親に近い年齢のわたしより
お姉さんのスタッフがいい、ということに違いない
そう自分に言い聞かせました。
「認知症だから…」
そんな風に人を見る子ではないとわかっているだけに
どうして? とモヤモヤした気持ちのまま帰宅しました。
また「みきちゃ~ん!」って、元気よく話しかけてくれる日を待つことに。
そして、「その日」はやって来ました。
メンバーさんが帰った後、いつものように掃除機をかけていたら
「わぁっ!」
そーっと入って来た女の子に気づかず
すっかり驚かされた、わたしです。
「ちょっと待っていてね」と声をかけて
掃除を続けながら、女の子と話をはじめます。
ずっとわたしについてまわりながら質問をしてきて、
本当に人懐っこい女の子です。
やっと2人とも腰を下ろして話し始めると、
女の子はこう言い出しました。
「あのさ、学童が終わるから、もうあまりみきちゃんのところに来れないかもよー」
わたしは思わず
「えっ、何で?」
詳しく聞くと、学童保育からの帰りがけにいつも、
BLG! の近所に住んでいるおばあちゃんの家に寄り、
そのときに、たまに、ここに顔を出してくれていたことがわかりました。
自宅は、BLG! から歩くと少し距離があるようです。
ちょっと寂しい想いになり
「でも、たまには遊びに来てくれるよね? 遊びに来てよー」
そんな想いを伝えたかと思います。
この日は水曜日。わたしは次回は金曜日に来ることを話すと、
女の子は
「じゃ、最後に金曜日に来るね!」
そう言って元気に走って帰っていきました。
そして金曜日。ちょっとしたお菓子と手紙を用意し、
仕事終わりに掃除をしながら、女の子を待ちました。
でも、この日、女の子は現れませんでした。
いつか来てくれると
用意したお菓子を持って翌週も出勤しました。
その翌週の月曜日。
掃除を終えて帰宅しようとBLG! を後にしたその時
「みきちゃ〜ん!」
女の子がわたしを呼ぶ声がします。
姿を確認して、わたしは思わずニヤけてしまいました。
「ねー、BLG! に戻ってよー」
と、女の子に言われて、
2人で引き返しました。
特別なことを話したり、質問したりすることはありませんでした。
わたしは用意しておいたお菓子を渡しました。
女の子が好きなチョコレートと、「あまいおはじき」
瓶に入っている飴細工で出来ている「おはじき」で、遊び方の説明書付き
お店で目にした時に、「いつか女の子と遊んでみようかなぁ」
と、気になっていたのです。
でもその場で遊んで食べることは、今のコロナ禍では衛生面からよくないと思い、
「お家に帰ったらお姉さんと遊んでみてね!」と伝えました。
「また遊びに来てねー」
「うん!」
元気に返事をして帰って行きました。
女の子との不思議な出逢い、共に学んだり遊んだりした時間が
なんだが夢のような、物語のような……。
わたしにとっては、女の子からたくさんの気づきをもらったひとときでした。
「認知症になっても大丈夫」と言える?
女の子の何気ない一言から始まった「宿題」について、
今もふと、考えることがあります。
診断を受けて2年が経ち、まだまだ不安はあります。
しかし、まずは認知症を受け入れ、前へ進むことの大切さ。
わたし住んでいる地域では、つながりはまだ多くありませんが、
理解し、応援して下さるご近所さんがお2人います。
そして、BLG! はちおうじは、わたしの居場所であり、
仲間がいて、たくさんのつながりがあります。
大切なことは、地域とのつながり、人とのつながり。
ひとりで悩み、引きこもらずに相談できる人に相談しましょう。
認知症と診断を受けることは幸せなことではないかも知れません。
でも、決して、かわいそうな人でもなく、不幸な人でもない。
そんな今のわたしの答えは
「認知症になっても大丈夫!」
女の子にも、そう伝えたい。
そして、最近ご依頼をいただく若い世代へのオンライン講演でも
そんな想いを、伝えていきたいと思います。
Aちゃん! またいつでも質問でも、遊びにでも来てね!
ありがとう! 大切な小さなサポーター。
*このシリーズのほかの回は、以下から読むことができます。