通帳が1冊、2冊、3冊…カードが足りな~い… もめない介護116
編集協力/Power News 編集部
認知症介護と切っても切り離せないのが、「親の家計管理をどうするか」問題です。多少忘れっぽくなったり、お金の計算が苦手になったりしたとしても、ドンブリ勘定でやり過ごせる時期もあります。頭ごなしに、“できないはず”と決めつけるのも禁物ですが、同時に「気をつけて」と口うるさく注意したからといって、できるわけではないという腹積もりも必要です。
自分ではこれまで何げなく行ってきたけれど、いざ親をフォローしようとすると想像以上にハードルが高いことに驚かされるのが通帳と銀行印、キャッシュカードの管理です。
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- 親が言う“いつもの場所”を探しても、出てくるのは使用済みの通帳ばかり
- ハンコはたくさんあるけれど、どれが銀行印なのかわからない
- キャッシュカードが見当たらない。紛失したのか、そもそも作っていないのかわからない(親も覚えていない)
- 通帳記帳や入金を忘れるので、引き落とし先に設定されている口座が残高不足に……
など、トラブルや課題に次々と直面します。
印鑑相違で次々と返送されてくる書類
我が家の場合でいうと、いちばん最初にぶつかった壁は「引き落とし手続きに必要な銀行印が見つからない」でした。
介護保険サービスを利用するための認定調査もなんとか終了。当初はサービス利用に乗り気ではなかった義父母でしたが、医師に勧められてしぶしぶ承諾してくれました。ケアマネさんや訪問看護師さん、ヘルパーさんとの顔合わせのときは、義父母も機嫌がよく順調にサービス開始。……と、ここまではよかったのですが、金融機関から次々に「印鑑相違」で書類が送り返されてきてしまいます。
「別の印鑑で判を押していただいたのですが、こちらは正しいものでしょうか」
「お父さまにもご相談したのですが、“このハンコで合っているかどうか自信がない”とおっしゃっていて」
引き落とし手続きの際には、義父が書斎から通帳やハンコを持ってきて、署名・押印をしていました。記帳された履歴から、それが年金口座で“残高不足になる心配が少ない”ということは確認し、番号の記入間違いもないよう、一緒に確認していたのですが、問題はハンコのほうでした。
「正しいものでしょうか」と聞かれても、そもそも義父母が何本の印鑑を持っていて、何にどう使っているかなど、まったく知らないのです。
よろしく頼むと、通帳の束を持ってきた義父
目の前の「印鑑相違」の問題については、金融機関に「換印届」を提出するよう、義父にお願いし、印鑑を登録し直す方法もあります。でも、お金の問題はこれからさまざまな形で起きてくるはず。また、これからきっとかさんでくるであろう医療費や介護費用を誰がどのように支払うのか、立て替えるのかといった話も、この時までまったくできていませんでした。
次々に返送されてくる書類の山にウンザリもしましたが、これはチャンスでもありました。
夫と相談し、義父と改めて話をしてもらうことにしました。
「これからもいろいろあるだろうから、今後、必要な支払いの手続きを代行させてくれないか」
夫がそう伝えると、義父は「わかった。よろしく頼む」と、まさかの即答。スッと部屋を出ていったかと思うと、通帳の束を持って戻ってきました。
「これが光熱費とか家計にまつわるものが引き落とされる口座で、こちらは税金・保険の支払い用口座で……」
夫はとうとうと説明を始めた義父をさえぎり、「おやじありがとう。ここから先の詳しいことは彼女と相談して」となぜか、わたしにバトンタッチ。義父と一緒に確認したところ、通帳は約10冊あって、そのうち、5枚はキャッシュカードが見つかりません。逆に、通帳が見当たらず、キャッシュカードのみ見つかったのが5枚ありました。
必要な口座以外を解約したいけれど
これ以外に、義母の通帳もいくつか出てきましたが、こちらもキャッシュカードはなし。ただ、義母のほうは「キャッシュカードを作った覚えはない」と言います。実際に作っていないのか、義母の記憶違いなのか……。
調べてみたところ、キャッシュカード、通帳ともに再発行料は1000円(税別)。すべて再発行すると1万円を超えてしまいそうです。まとめられるものはまとめ、絶対に必要なもの以外は解約するという方法をとれば、再発行手数料はかからず、その後の管理もラクになりそうではあります。
まとめ方の案として、
- 年金・家計・引き落とし用口座
- 貯蓄用口座
- 家賃収入・管理費などの管理口座
の3つに絞り込む方法を考え、義父にそれとなく伝えてみましたが、反応は芳しくありません。難しい顔でうなっているので「やっぱりこのままにしておきましょうか」と声をかけると、パッと表情が明るくなります。これ以上プッシュするのはやめておいたほうがよさそう。
「昨日よりちょっぴりマシ」を目指して
たとえ親子であっても、財布事情に口を出されるのは気分がよくないものです。ましてや私は、「義理」の関係なので深入りは禁物。せっかく義父母が心を許して通帳やキャッシュカードを見せてくれているのに、猜疑心をあおっては元も子もありません。
通帳をまとめるのは、スッパリ諦めました。そして、義父の指示にしたがって通帳を記帳し、残高をチェックし、移し替えて……という作業をすることに。その時はこれ以外に方法はないと思っていましたし、いまでもベストな選択肢だったと思っています。ただ、10冊以上もあると記帳をするだけでもひと苦労で、すさまじく面倒だったことも確かです。
自分の両親はいずれも70代で、いまのところ、お金の管理の心配はなさそうです。ただ、いまのうちから「もし可能であれば、少しずつでいいので通帳の整理を始めてもらえると助かる」と伝えています。うっとうしいと思われない程度に間を開けながら、たまに「その後、どう?」と聞いたりもしています。
年をとっていても、若くても、通帳やキャッシュカードの数は必要なものだけにしぼったほうが管理しやすくなります。でも、頭ではわかっていても、なかなか実践に移せないのはわたしたち子ども世代も同じです。だからこそ、お互いに声をかけあいながら「昨日よりちょっぴりマシ」ぐらいを目指して一緒に老いや介護に備えていければ、とも思うのです。