タンゴやサルサで旅行気分 時空も国境も超えて、儀式にトリップ?
アルツハイマー型認知症のタカオさん。スケッチされたその不思議な世界観を、間学(あいだ・がく)さんがコレクションしています。日本のみならず、海外の人の注目も集めている作品の数々。タカオさんのガイドつきで紹介します。ようこそ、タカオ美術館へ。
- 作品名:Go up the stairs to play music
- 神に召される話じゃないぞ。わしにはまだまだやり残したことがたくさんあるからね。ただ問題なのは、少々身体が不自由になってるから、それから記憶の方もなかなかおぼつかなかったりするから、行動規制がかかっておるんじゃ。緊急事態宣言を出すほどでもないが、まあその次くらいのレベルってところなんじゃないかな。そうそうこの前テレビを見ていたらバーチャルトラベルなんてものを紹介しておった。行かなくても行けるんじゃ。どこでもね。摩天楼だって、フィヨルドだって、ガラパゴスだって、桂林だって、どこだって実際に行った気になれるんじゃよ。バーチャルだから架空ってことだろうけど、まあ気持ちが大事だからさ。行った気分とか、味わった感じとか。ナントカって旅行会社だったけど、忘れちゃったからさ、自分でもっと簡単に行けるバーチャルトラベルを思いついたんじゃ。音楽じゃよ、音楽。アレはいいぞ、それこそ簡単に時空を超えられるからね。タンゴやサルサなんかはサイコーじゃ。行ったこともない中南米の街角にあっという間に着いちまった。スメタナなんか流したら一瞬で『わが祖国・モルダウ』が目の前に広がったぞ。わしの祖国じゃないけどね。ただちょっと気をつけないと、えたいの知れない民族ドラムなんか流したら、怪しい儀式に誘われて簡単に憑依されちゃうから……クワバラクワバラじゃよ。
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