「別れの美学」を学んだよ 名を忘れても「また会おう」が大切なんじゃ
アルツハイマー型認知症のタカオさん。スケッチされたその不思議な世界観を、間学(あいだ・がく)さんがコレクションしています。日本のみならず、海外の人の注目も集めている作品の数々。タカオさんのガイドつきで紹介します。ようこそ、タカオ美術館へ。
- 作品名:また会う日まで
- 最近また一つ学んだことがあってな。別れの美学ってやつじゃよ。つまり、わしのように日々加速度的に記憶があやふやになっていく人間にとっては大事なことなんじゃが、わしが忘れても、相手はわしを忘れないでいて欲しいっていうささやかな願いを確実に叶える方法じゃよ。ちょっとばかり芝居がかってるかも知れないが、心を込めて大げさなくらいの身ぶりで相手と別れのあいさつを交わすんじゃ。さっきまで何回も聞きなおした相手の名前をまたまた忘れていたとしても、そんなことはお首にも出さずにじゃ。わしはお前さんとの時間をこの上なく堪能したという証しだから、名前の一つや二つ忘れていたって構やしない。片手を上げて、しっかりと相手の目を見て、また会おうって。大事なことなんじゃ。