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タカオ★FANTASISTA

無重力でよみがえる だから今夜もサクッと月へ クレーターは記憶の穴?

アルツハイマー型認知症のタカオさん。スケッチされたその不思議な世界観を、間学(あいだ・がく)さんがコレクションしています。日本のみならず、海外の人の注目も集めている作品の数々。タカオさんのガイドつきで紹介します。ようこそ、タカオ美術館へ。

THE MAN WHO RETURNED FROM THE MOON!
作品名:月から戻った男
月から戻ったばかりの男が言ったんじゃ。月のクレーターっていうは、つまるところ一種の記憶の穴じゃって。そこには昔ちゃんと森や川や町があって、顔見知りの人間や動物が住んでいたんじゃ。彼らには生活や冒険があって、恋や驚きもあって、楽しいだけじゃないけれど、それはそれは懐かしい風景に満ちていたってね。……え? アポロに乗っていたアームストロングさんの話じゃないよ。わしわし、わしの話じゃよ。ここだけの話だけど、実は昨日の夜に、ちょこっと行って来たんじゃよ。確かに今じゃただの穴ぼこだけどさ、分かるんじゃ、わしには分かるんじゃ。無重力で踊っていると、何だか夢の中を浮遊しているようで、全くストレスがないからね。どんどん浮かんでくるんだよ、昔の記憶ってのがさ。

次回:感じる気配 誰かが狙うわしの飯 食卓にもレコーダーが必要じゃ

前回:老人1人のキングダム 家来の歩行器とともに記憶の回廊をお散歩する

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