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春を感じカツオとお散歩

東京都八王子市の滝山城跡公園で、ちょっとした「山登り」を楽しむメンバーさんとカツオ。なかまぁるは、それぞれの「私」が、自分らしく生き続けていくための情報をお届けします。この連載は、東京都八王子市のデイサービスで、認知症当事者スタッフとして働く、さとうみきさんが綴るエッセイです。
東京都八王子市の滝山城跡公園で、ちょっとした「山登り」を楽しむメンバーさんとカツオ

こんにちは、さとうみきです。
今日は春らしい陽気の午後でした。最近、「BLG ! はちおうじ」のメンバーさん(BLG ! では利用者をメンバーさんと呼びます)になった方の提案で、午後の活動は看板犬のカツオの散歩に行きたいと、車に乗り込みました。

「高尾山まで行こう!」
「俺、花粉症で死んじゃうよ~」

笑い声があがる車内で決まった行き先は八王子市内の「滝山城跡公園」
私はメンバーさんと訪れるのは3回目。

そんな車内で昨年10月に起きた、今日と同じメンバーさんお二人のエピソードを思い出しました。

女性のメンバーさんは空間認知障害があり、山道を登るときも足元を一歩一歩確認しながら慎重に。その後ろを、女性のひと回り年上の男性メンバーさんが疲れた様子で、私と一緒にゆっくりと足を進めていました。

私は男性メンバーさんの足元を見ながら会話し、少し下を向いて歩いていたのだと思います。ふと気がつくと、私の視界に女性の手がすっと入ってきて、差し伸べられたその手を、男性メンバーさんが……。

二人が手をつなぎ、共に登り始めた、その光景が記憶に甦りました。

昨年10月、女性メンバーさんが男性メンバーさんに手を差し伸べ、2人が手をつないだホッコリするシーンを捉えた一枚です
昨年10月、女性メンバーさんが男性メンバーさんに手を差し伸べ、2人が手をつないだホッコリするシーンを捉えた一枚です

今日も男性メンバーさんはゆっくり、最初は私と一緒に登り、
「こんな凄い素敵な場所があったんだね~」
「へえ~、今日はいいところに来れたよ!」

そんなメンバーさんの言葉を聞きながら
先を歩いていた女性メンバーさんと合流した、そのときでした。
男性メンバーさんの横に来てそっと、
「本当にいいところですね」と声をかけたのです。

まるでさっきの、私と男性メンバーさんとの会話の内容や、私が前回のホッコリした出来事を思い出していることを知っているかのように。

山頂ではきれいな空気をたっぷり深呼吸しながら休憩。
カツオとの散歩を楽しむメンバーさんたち。
景色を眺めながら、ただただ春風に身を任せてゆっくり過ごす方も。

春の風を感じながら束の間の休憩
春の風を感じながら束の間の休憩

下山の時間がきて、なごり惜しい思いの中、楽しく会話しながら下っていきます。
あれ?
「そっちは関係者以外立ち入り禁止ですよ~」
「危ない、捕まっちゃうよ~」
そんな一瞬の「コースアウト」も含めた短い時間の散歩での光景と会話でした。

男性メンバーさんは2回目の滝山城跡でしたが、
はじめて訪れたと思って終始感動し、喜ぶ表情はとても美しく。
認知症になって忘れてしまうことは増えてしまっても、感動がその都度あることは、素敵なこと。そんなご本人に合わせることも優しさなのではないかと、あえて私は「2回目ですよ」とお伝えしませんでした。

私もそんな優しさに包まれたいという思いに気づけた散歩でした。

何となく母に似たメンバーさんにくっつき、甘えてしまう私
何となく母に似たメンバーさんにくっつき、甘えてしまう私

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