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「もう行かない」父が地域包括センターに不信感【お悩み相談室】

説明を受けるひと

看護師の石橋さつきさんが、介護・支援活動を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.両親が遠方で暮らしており、母(80歳)が初期の認知症と診断されました。今後のことを相談するために父(83歳)が地域包括支援センターに行ったそうですが、さんざん待たされたうえに対応が悪く、「もう二度と行かない」と言っています。高齢の2人暮らしは不安なので、地域でサポートしてもらいたいのですが……。(50歳・女性)

A.せっかく足を運んだのに、残念な思いをされましたね。地域包括支援センターには「二度と行かない」とのことなので、ほかの相談先としては市区町村の高齢福祉課、介護保険課などがあります。ただ、高齢福祉課の中に地域包括支援センターがあり、窓口が同じこともあるので、ご両親がお住まいの地域はどうなっているのかを調べてみてください。そのほか認知症疾患医療センターの相談窓口では、診断や治療だけではなく、介護保険申請の相談などもできます。

お父さんは一度いやな思いをされていますから、再び公的な機関に行く気にはなれないかもしれませんね。娘さんのほうから地域包括支援センターに電話をして、お父さんがどんなふうに対応されていやな思いをしたのか、どんなことを相談したかったのかを伝えたうえで、サポートを依頼するのも一つの方法です。そうすれば相談員が状況を理解したうえで、ご両親の自宅に足を運んでくれると思います。このままだと、地域包括支援センターのほうでは、お父さんがいやな思いをされたことに気づいていないかもしれません。お伝えいただくことは、地域包括支援センターにとって貴重な情報になり、自分たちを見直すきっかけになるのです。

地域包括支援センターでは、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などの専門職が高齢者やその家族から相談を受けています。私自身、地域包括支援センターで専門職として働いていたことがあるのでわかるのですが、専門職側が、相談者が望んでいることをくみとれないということがあります。例えば相談者はただ話を聞いてほしかっただけなのに、専門職がすぐに介護保険サービスにつなげようとすると「思っていた対応ではなかった」となってしまいます。 相談者は漠然とした不安はあるけれど、何を支援してほしいのかもわからないまま相談に行くのはよくあることでしょう。そこをくみとるのが、専門職の役目だと考えています。要望がうまくまとまっていなくても、ぜひ相談していただき、地域包括支援センターとつながってほしいと思います。

相談者が心配されている通り、高齢者の2人暮らしには地域のサポートが欠かせません。ぜひ相談者が橋渡し役を担い、地域包括支援センターとの良好な関係を取り戻してほしいと思います。

【まとめ】認知症の母と2人暮らしの父が地域包括支援センターに「二度と行かない」と言うときには?

  • 市区町村の高齢福祉課や介護保険課、認知症疾患医療センターなど、地域包括支援センター以外の認知症相談窓口を利用する
  • 相談者が間に入り、地域包括センターに連絡して、お父さんがいやな思いをした状況を伝え、サポートを依頼する

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