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お悩み相談室

入居者への態度が悪い職員 自分は新人なので何も言えない【お悩み相談室】

入居者の元へ向かう介護士のイメージ

若年性認知症コーディネーターの中村益子さんが、介護・支援活動を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.最近介護福祉士の資格をとり、認知症対応型のグループホームで働き始めました。大変なこともありますが、入居者と過ごす時間は楽しく、やりがいを感じています。ただほかのスタッフの入居者への対応が悪いことがあり、何度も同じ質問をする入居者に対して「さっきも言ったでしょ」と怒る姿をよく見かけます。認知症だから忘れてしまうのは仕方ないとわかっているはずなのに。私は新人なので意見しづらく、見ているのがつらいです。(28歳・男性)

A.介護の仕事を楽しめていることは、すばらしいことです。今の気持ちをこの先も忘れずにいてほしいと思います。ほかのスタッフの対応についても、相談者の気づきは認知症ケアにとって大事なことです。認知症の人は、怒られても自分から「つらい」とは言いません。でも相談者が「見ていてつらい」と感じるのと同じように、認知症の人も本当はつらいと感じているはずなのです。

認知症の人の尊厳を守ること、思いに寄りそうことは、認知症ケアの基本です。スタッフは認知症についての知識や理解が乏しいか、もしくは経験を積むうちに認知症ケアの基本を忘れて、なれ合いになってしまっているのかもしれません。また、業務に追われてイライラして、入居者を怒ってしまった可能性もあります。家族なら仕方のないことですが、介護のプロであるスタッフがイライラを入居者にぶつけるのはあってはならないことです。

認知症対応型グループホームの場合、開設する際に、代表者や管理者、計画作成担当者(ケアマネジャー)は、認知症ケアの知識や技術を学ぶ研修を受けることが義務づけられています。ただし、すべてのスタッフが研修を受けているわけではないので、認知症ケアについて知識がないスタッフもいるかもしれません。とはいえ、新人である相談者が直接アドバイスしたり、注意したりするのは難しいと思います。まずは研修を受けている管理者などリーダー的な存在の人に、相談者の気づきを伝えてみてください。認知症ケアに関しての職場内研修を実施するなど、スタッフが学ぶ機会を設けることを提案してもいいでしょう。私がグループホームの管理者をしていたときには、スタッフそれぞれに意見や悩みを書いたリポートを提出してもらい、個別に面談していました。スタッフは症状が強くでやすい入居者に対して苦手意識をもっていたり、「対応が大変な人」というレッテルを貼ってしまったりすることがあります。それが悪い対応につながることもありますが、症状が出る理由をスタッフ同士で一緒に考えると、対応策がみえてきて、ケアが楽しくなってくるのです。

相談者は新人だからこそ、慣習などにとらわれず、気づけた点もあると思います。相談者の気づきが職場全体を変えるきっかけになることを願っています。

【まとめ】認知症対応型の施設で同僚のスタッフの入居者への対応が悪く、見ているのがつらいときには?

  • 認知症ケアについての知識や技術があるリーダー的存在の人に気づいた点を伝える
  • 認知症ケアについての職場内研修などを実施してもらう

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