40代部下に若年性認知症のウワサ。本人に伝えるべき?【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
若年性認知症コーディネーターの中村益子さんが、介護・支援活動を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.数カ月前から部下(49歳)の様子がおかしく、取引先との大事なアポイントメントを忘れたり、出先から道に迷ったといってなかなか帰ってこなかったり、これまでになかったミスが頻発しています。別の部下から同様の報告があり、「若年性認知症ではないか」というウワサも出ています。小さな会社なので相談できるような部署がなく、本人にどう伝えればいいのか、まず家族に相談したほうがいいのか悩んでいます。(53歳・男性)
A.認知症は、本人が最初に変化に気づくことが多いと言われています。特に若年性の場合は、「認知症かもしれない」という自覚があることも多いので、まずは家族ではなく本人に話してみましょう。
誰が伝えるかという点ですが、直属の上司や会社のトップというよりも、社内で本人が最も信頼しているであろう人がいいと思います。信頼している人の言葉は、受け入れやすいのではないでしょうか。また「約束を忘れる」「道に迷う」など、普段と違う様子があったら、日付や様子をメモしておき、伝えるときにそれを見せるといいでしょう。そして若年性認知症だと決めつけずに「これは病気によるものかもしれないので、受診してみては?」と伝えてください。メモは本人に渡して、受診の際に医師に見せてもらうと、貴重な診断材料の1つになります。
若年性認知症の場合、本人は症状に気づいているのに、なかなか受診しないというケースがよくあります。その理由の1つに、認知症と診断されてしまうと、会社をクビになるかもしれないという不安があるようです。このため、「部署を変えてでもここで働いてもらうから」など、認知症と診断された場合の会社の方針を伝えておけば、本人は安心して受診できると思います。
若年性認知症は現役世代で発症するので、家庭の経済面に大きな影響を及ぼす病気です。それを補うためのさまざまな支援制度がありますが、支援を受けるには、「認知症と診断された初診日」が重要になります。例えば障害年金を申請するには、初診日から1年6カ月以上経っていなければなりません。つまり早期に受診されることは、経済的な面でも後々大切なのです。仕事をしている場合、家庭よりも先に勤務先で認知症に気づかれるケースが多くあります。相談者の貴重な気づきを無駄にせず、早めに本人に伝えてほしいと思います。
【まとめ】部下が若年性認知症かも。本人にどう伝えればいいのか悩むときには
- 本人が社内で最も信頼しているであろう人から伝えてもらう
- 若年性認知症だと決めつけずに、まずは受診を促す
- もし認知症だった場合の会社としての方針を示す