症状にムラあるレビー小体型認知症 どの基準で判断すべき?【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
介護支援専門員(ケアマネジャー)の長澤かほるさんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.私はケアマネジャーをしていますが、初めてレビー小体型認知症の女性(75歳)を担当しています。一人暮らしで最近部屋が荒れてきているので症状が進んでいるのではないかと心配なのですが、面談のときにはとてもしっかりしているので、モニタリングやケアプランの見直しなど判断が難しいです(38歳・男性)
A.レビー小体型認知症の人は、認知機能がしっかりしているときと低下していてボーっとしているときがあります。これはレビー小体型認知症の代表的な症状で、「認知機能の変動」と言われています。アルツハイマー型認知症の人が「取りつくろい」でしっかりしているように見せることとは、根本的に違います。ケアマネジャーが認知症の方に負担をかけないように面談を30分程度に設定している場合、認知機能が変動した状態をケアマネジャー自身が確認できない可能性があります。ケアマネジャーがいるということは、利用者はデイサービスやホームヘルパーなど何かしらの介護保険サービスを利用していると思いますので、そのスタッフたちからも情報を得て、面談時の様子だけではなく、多角的に、総合的にアセスメント(評価)を実施する必要があると思います。例えば面談時には会話だけではなく、テレビのリモコンを操作してもらうなど、日常動作の確認をします。デイサービスのスタッフなどにも認知機能が低下している状態の情報を収集するとともに、日常動作の確認もやってもらうのです。
ケアマネジャーが注意しなければならないのは、レビー小体型認知症の人に対しては、認知機能の変動をふまえたうえでケアプランを作成することです。認知機能が高いときには受け答えや歩行がしっかりしていますが、低いときにはボーっとしていて傾眠傾向(軽度の意識障害)にあり、転倒しやすくなります。そこで認知機能が高いときには、リハビリ体操などのアクティビティを積極的に行う、低いときには転倒の危険があるので避けるというように、変動に合わせてケアプランに幅を持たせる必要があると思うのです。サービス提供時になかなか難しいことですが、定時にこだわらず融通を利かす必要もあります。そのためにも、利用者の介護に関わっているチームで協力しあい、アセスメントを実施することが大事です。
私の父もレビー小体型認知症で、認知機能の変動がありました。入院時に血圧や体温などのバイタルチェックの時間が決まっていたのですが、認知機能が低下しているタイミングに当たってしまうと、「やめろ、ばかやろう」と言って看護師を蹴るなどしていたそうです。この状態のときには、とにかく「触ってほしくない」「関わってほしくない」という気分になるようです。認知機能が高いときに合わせてもらえていたら、スムーズにバイタルチェックができ、父も苦痛を感じることはなかったのかなと思います。
相談者のお悩みで1点気になるのが、「最近部屋が荒れてきている」ということです。レビー小体型認知症の人は、薬に過敏に反応する傾向があり、市販薬でも錯乱状態になって部屋を荒らすようなことがあります。つまり、認知機能の変動だけではなく、市販薬が影響している可能性もあります。レビー小体型認知症の診断をした医師に相談して、風邪薬や胃薬などごく一般的な市販薬に関しても、服用の可否について確認しておくようアドバイスしてください。もちろん医療連携として、ケアマネジャー自身が確認することも大切です。
【まとめ】レビー小体型認知症の人のケアプランを見直したり、モニタリングしたりすることが難しいときには?
- 関わっているほかの介護スタッフからも情報を集めて、総合的にアセスメント(評価)を実施する
- 認知機能が高いときと低いときに合わせてケアプランに幅をもたせる
- 薬に過敏に反応して錯乱状態になる場合があることを理解する