お悩み相談室

軽度の認知症になった父を、母は冷たくバカにします【お悩み相談室】

介護支援専門員(ケアマネジャー)の長澤かほるさんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.母と2人で暮らしている父(80歳)が、MCI(軽度認知障害)と診断されました。月に2、3回は帰るのですが、父の失敗をバカにしたり、適当にあしらったりする母の態度が気になります。最近は父の元気がなく、落ち込んでいるようでうつ病になるのではないかと心配です。母にはもう少しやさしく接してほしいのですが。(48歳・女性)

A.よく見られるケースです。長年連れ添ってきた夫婦の関係が、こうした局面で表面化しやすいようです。このため、相談者からお母さんに対して、ストレートに「お父さんの失敗はMCIのせいなのだから、もう少しやさしくしてあげて」と伝えても効果はないと思います。

お父さんがMCIになったことで、夫婦間の役割、立場に変化が生まれ、家族の形がゆがみ始めている状態だといえます。お母さんは受け入れるのが難しい時期だと思うので、まずは相談者の力で、先にお母さんの心を解きほぐしてはいかがでしょうか?

例えば「お父さんがこういう状態になるのは、想定外だったよね」「お父さんが失敗するとお母さんはどんな気持ちになる?」といった声がけにより、お母さんの今の気持ちを知ること、その気持ちに共感を示すことができると思います。

私が担当する利用者の娘さんで、お母さんの認知症を受け入れられず、親子でバトルを繰り返している方がいました。そこで「認知症の人に特化したアセスメントシート」(利用者の情報から課題を知るためのシート)の中に家族が記入できるシートがあるので、何枚かをお渡ししました。すると、娘さんはお母さんのことに関して、わからないことがたくさんあることに気づかれました。そのためお母さんと一緒に、お母さんの生活歴、好み、娘を心配する母親としての思いなどを聞きながら書き込んでいったそうです。するとお母さんに対する認識が変わって、認知症になったお母さんの不安や苦しみも理解し始め、お母さんへのイライラが激減し怒鳴り散らさなくなったそうです。

私の父も認知症(レビー小体型認知症)でしたが、「私をどんなふうに育ててくれたのか」「仕事をどれだけがんばってくれていたのか」など、同じシートに書いたことがありました。さまざまな思い出や元気な父の姿、声までがよみがえってきて、書きながら泣いてしまいました。相談者のお母さんにもお父さんの過去のいい部分を思い出してもらうと、バカにしたくなったり、適当にあしらいたくなったりする気持ちにブレーキをかけることができるのではないかと思います。「私が子どものころ、お父さんどんな感じだったの?」など、相談者とお母さんの間でお父さんの思い出話をしてみてください。お母さんは今、お父さんの失敗に意識がフォーカスしている状態だと思いますが、お父さんがこれまでしてくれたことに焦点を変えることができると、失敗の受け止め方が変わってくるのではないでしょうか。

お父さん自身にはどうしたらよいでしょうか。「元気がなく、落ち込んでいる」ということなので、お父さんを散歩や喫茶店に誘うなど家から連れ出し、お母さんからいったん離してみてください。そして「お父さんは今どんなことがつらい?」と気持ちを聞いたり、「お父さん、がんばっているよ」と励ましたりする言葉をかけてあげましょう。お父さんにとって特別な時間になると思います。

MCIは、健常と認知症の境目にいる時期で、認知症に進行するかどうか、その時期をどれほど先延ばしにできるか、は家族の関わり方も大きいといえます。最終的にお父さんに対するお母さんの接し方が重要だということをわかってもらえるといいですね。

【まとめ】MCIの父の失敗を母がバカにするときには

  • お母さんの今の気持ちを聞いて、心を解きほぐす
  • お父さんがこれまで家族にしてくれたことをお母さんに思い出してもらう
  • お父さんを家から連れ出し、気持ちを聞きだしたり、励ましたりする

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