介護の裏ワザ、これってどうよ?

そんなに愛してたっけ?驚愕のお見舞いお百度参り これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母が認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました。

もうここを仕事机にする! 異論は認めぬ。じーちゃん、足じゃま ※徹夜明け&〆切りに追われて切羽つまっているゆずこ

まだ病室にいるのに「お見舞いに行きたい」 こんなときどうする!?

ウイルス性の胃腸炎で入院したじーちゃんでしたが、その後の検査でなんと7センチほどの胆管がんが見つかりドタバタの青山家。ばーちゃんには「余計に不安にさせてしまうから」という理由で病名は伏せていました。
日常的にじーちゃんの愚痴を言っているうえに、じーちゃんの過去の浮気騒動が今も地雷になっていて、事あるごとに非難しまくり……のばーちゃんだったのですが、今回の入院をきっかけにある変化が起きました。愚痴を言いながらも、かなり頻繁に「お見舞いに行こうよ」「病院に連れて行っておくれよ」と言ってくるようになったのです。
なんだかんだいっても、60年以上連れ添った夫婦。わたしもできる限り応えてあげたいと思い、仕事や予定を調整してせっせと病院に通いはじめました。

だがしかし。
最初は3日に一度くらいの頻度で行っていたのですが、ばーちゃんはそれでは満足しません。3日が2日になり、最終的には毎日「お見舞いに行きたい」とせがまれるようになりました。もうこれではいくら調整しても仕事が進まず、わたしも予定を入れられません。
なんとかしないとなぁと思いつつ病院から帰宅し、玄関で靴を脱いでると、
「ゆずこ、病院に連れて行っておくれ」とまさかの“アンコール”。
「今帰ってきたばかりじゃん」と伝えてもばーちゃんは聞く耳を持ちません。いくらなだめてもお見舞いに行きたい気持ちは増すばかりなので、再び車を走らせるゆずこ。こうして日を追うごとにその間隔は短くなっていき、なんだかもう面白くなってきてしまいました。「止めなかったらこの間隔はどこまで短くなるのか」突き詰めてみてみたくなったのです。

もういい! じーちゃんのベッドで仕事をさせてもらう! 異論は認めぬ!

帰宅直後の催促に始まったアンコール。次は病院から帰る車内で発生しました。そして間隔は病院の出入り口を一歩出たところにまで狭まり、さらには病室のある階のエレベーターに乗り込んだ瞬間まで!
「まだお見舞いの最中って言っていいレベルじゃん!」と突っ込みたい気持ちを抑え、真顔でばーちゃんに付き合います。
そしてそして。ついには大部屋のベッドで横になるじーちゃんの顔をまじまじと見つめて、「……ゆずこ。私をお見舞いに連れて行っとくれ」と一言。
いや、絶賛見舞い中だし! 本人、目の前! ここ病院!

もうここまでくると、どう仕事を調整しようがまったく進みません。そこでわたしは、大部屋のじーちゃんのベッドの上に自分の仕事スペースを確保し、資料を大量に持ち込んでその場で仕事をこなすことにしました。
「じーちゃん足もっとどけて!」「ここをゆずこの仕事場とする!」
もうお構いなしです。だってわたしにも生活があるもの!
そんな光景を眺めながら「お前らも本当にヒマだな」とボソッと呟くじーちゃんは、やっぱり嬉しそう。

病院の1階には患者さんや来院者用に小さなカフェ(しかも激安)があったので、仕事とばーちゃんの相手に疲れたらそこに避難します。
考え方によっては、「わたしはお得なカフェのある無料のシェアオフィス(病室)で仕事をしている」と思い込めないこともない。なにそれ、かなりお洒落じゃん。オフィスの仲間とも次第に顔見知りになり、最終的には同じ部屋の方々から「1階の売店であんぱんを買ってきてほしい」とよく頼まれる仲に。この歳になってパシリになるとは、貴重すぎる経験です。ふっ。

「ハーイ買ってきましたよー」「おう、おせーな」「おー、こっちこっち」「ゆずこちゃんありがとねー」なぜか大人気のあんぱん。、買って食べても大丈夫か、看護師さんに聞いてから。

介護者が倒れたらどうする? 万が一の頼みの綱は、あらかじめ用意しよう

「ばーちゃんの気持ちに応えたい」となんとか対応してきた今回の出来事ですが、連日、取材で家を空けなければいけない時や、締め切りに追われている時には、どうしてもお見舞いに行けません。行けないとなるとばーちゃんは、友達はもちろん、タウンページを見てラーメン屋や美容室、知らない人など片っ端から「私をお見舞いに連れて行っておくれ」と電話をしてしまう……介護者が一緒にいられない時は一体どうすればいいのでしょうか。
認知症になっても安心して暮らせる社会の実現を目指す、『認知症の人と家族の会』東京都支部代表の大野教子さんにお話を聞きました。

「普段おじいさんの文句を色々言っていても、もう自分の分身みたいなものなのでしょうね。それにしてもゆずこさん、よくぞそこまで対応しましたね。比較的自由に動ける家族がいるからこそできることなので、おばあさんにとっては相当幸せな状況だったと思います。『ほかの方にまで協力を仰いでしまう』とのことですが、そもそもここまで恵まれている環境はそう多くはありません。

青山家はゆずこさんが元気だから皆さんが救われていますが、介護者が病気や入院で倒れてしまった場合、通常は「ショートステイ」を利用します。いつも利用している施設が空いていればいいのですが、予約がいっぱいで入れない場合などは、緊急ショートステイや一時的に有料老人ホームで受け入れてもらうこともあります(対応や利用条件は自治体によって異なります)。
ショートステイは基本的に集団生活が前提です。慣れない場所や環境は、認知症の人をより混乱させてしまったり不安にさせてしまったりします。一度も利用したことがない状態で万が一のショートステイに突入すると、ご本人と家族が大変な思いをすることがよくあります。
緊急時に相当なストレスを感じながら慌てて探すのではなく、できることなら普段からショートステイの利用を検討してみてください」

ショートステイは、家族や本人を守ってくれる“頼れる保険”のような気がします。もしものトラブルはいつ起こるか予測できません。日常的に利用して、緊急時に頼れそうなところを事前に把握できるといいですね!

大野教子(おおの・きょうこ)さん
『認知症の人と家族の会』東京都支部代表。1995年から4年間、認知症の義母を在宅介護(その後18年間遠距離介護)し、およそ3年前に看取る。1999年に同会の東京都支部の世話人と電話相談員を務める。2011年、支部代表となる。

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