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義父入院「留守を守る」と施設拒否の義母の心をほぐす救世主!? もめない介護49

おやつを頂くイメージ
コスガ聡一 撮影

訪問介護(ホームヘルプ)や通所リハビリ(デイケア)のある暮らしにも少しずつ慣れ、ゆくゆくはショートスティも利用したい。でも、無理じいをして介護拒否に転じては元も子もないので、慎重にとっかかりを探っていこう。義父が肺炎で緊急入院することになったのは、そんな矢先のできごとでした。(前々回のお話はこちら前回のお話はこちら

義父のほうはとにかく、入院しての治療を希望するということで義父母との意見も一致し、往診医を通じて受け入れ先の病院を探してもらうことになりました。一方、悩ましかったのは「入院中、義母の生活をどうするか?」という問題です。

ケアマネさんからは、介護施設に一時入所することを提案されました。義父母はともにアルツハイマー型認知症と診断されていましたが、進み具合は若干、義母のほうがリード。「軽度」の義父が「中程度」の義母を日々の暮らしをフォローしていたからこそ、夫婦ふたり暮らしが成立していたようなところがあったのです。

家族としても、施設への一時入所に異存はありません。義父も、熱にうなされながらではありますが、「ひとりで家に残しておくのは心配」「施設のほうが安心だろう」と賛成してくれました。ただひとり、大反対したのは義母自身でした。

往診のドクターに説得をお願いしてみる

「お父さまが帰ってくるまで、しっかり留守を預かることがわたしの務めですから!」
鼻息荒く宣言したかと思うと、あとはこちらがいくら施設入所の必要性を説明しても完全シャットアウト。
「ひとりで好きなように暮らしますから、ヘルパーさんも来ていただかなくて結構です」「お父さまがいないんだから、デイには行きません」などなど、どさくさにまぎれて好き放題なことを言い始めたのです。マジか!

一時はあまりの義母の強硬さに根負けし、(施設は無理か……)とあきらめかけました。しかし、これまで通ってくれていたヘルパーさんに「おひとりは難しいと思います」と耳打ちされたことで、あきらめている場合じゃない! と我に返ります。さらに、「お医者さまの言うことなら聞いてくれるかもしれない」と助言をもらい、往診のドクターに「なんとか義母を説得してください!!!」と頼みこみました。

往診のドクターが義母に話をする間、私はあえてその場を離れ、玄関の外にいました。一緒になって説得するよりも、ふたりだけで話をしてもらったほうが、ことの重大さが義母にも伝わるのではないかと思ったからです。医師との話し合いが終わったとき、義母は幼い子どものようにふくれっつらをしていました。それでも医師が「施設で、お父さんの帰りを待ちましょうね。そのほうがお父さんも安心して治療に専念できますからね」と声をかけると、「そうですね」と答えていました。ミラクル!

「施設に入る・入らない」トークで、ストレスはとうに限界

医師がどのように説明したのかわかりません。確認もしませんでした。義母の気が変わらないうちに、さっさと施設入所の段取りをつける必要があったからです。

義母の行き先探しは、ケアマネさんにお願いしました。

できれば今日中、それが難しくても明日には入所したい。通常であれば、条件に合った施設をリストアップし、見学するとともに施設の方と面談し……というステップを踏むところを全部すっ飛ばし、とにかく大至急受け入れてくれるところを探してもらいました。

「料理がおいしくて、ホテルみたいな雰囲気のところだったら、療養のための滞在ということでご納得いただきやすいかもしれません。少々お値段は張ってしまうかもしれませんが……」

ケアマネさんにそう言われたときも、さほど深く考えず、「その作戦でいきましょう。なにはともあれ、早く入れるところで!」と答えてしまったほど。「施設に入る・入らない」を巡るエンドレストークに疲労困ぱいし、ストレスはとうに限界値だと感じていました。

渋々納得したものの、入所する気はまったくない義母

そして見学もせず、パンフレットすら見ずに、ケアマネさんが探してくれた「翌日から入所OK」という有料老人ホームに決定。かなり乱暴な決め方でしたが、これ以上実家に泊まり込まずにすむなら、それだけでありがたい! という心身ともにヨレヨレになりながらの決断でした。こうして、なんとか義母の落ち着き先が決まってホッとしたのですが、実はまだ大きな課題が残っていました。

自らも入院を望んだ義父と異なり、義母は施設入所をする気はまったくありませんでした。往診の先生がなんとか説得してくれたものの、その効力がいつまで続くのか。そんな不安は見事に的中し、施設に向かうまでにさらに一波乱が待ち受けていたのです。

すきあらば、施設入所をチャラにしたい義母と、なんとか一時入所にこぎつけ、日常に戻りたいわたしたち。次回は、その一触即発の攻防戦をどう切り抜けたかについてご紹介します。

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