介護あるあるが超常現象 オチなし成功例 あるある探検隊の活動報告25
構成/福光恵 写真/レギュラーのマネジャー
「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま介護施設をまわっています。テレビや劇場の一般客相手と違って、施設の利用者さんたちを笑顔にするのは、やっぱり難しい! そんな2人が見つけた、今日の介護現場の“あるある”は――。
買ったその日が賞味期限〜! ハイ、ハイ、ハイハイハイ! あるある探検隊! あるある探検隊!
こちらご存じ、レギュラーの2人の十八番ネタ「あるある探検隊」。この日、介護レクリエーションで訪れたデイケア施設で、2人は“新たな試み”に挑戦していた。「あるある探検隊」のあるあるネタを、施設スタッフから募って一緒にやってみよう、という初めての取り組みだ。
「じゃあ、次はこのデイケア施設独自の“あるある”をやってもらいましょう。スタッフさん、どなたかやりたい人は手を挙げてくださ~い!」
もちろん、いきなりそんなことを言われてすぐにできる人はいないので、事前に施設を通して何人かに考えてきてもらうようお願いしてある。
さっそうと手を挙げてステージに上がってくれたのは若い女性スタッフ。ところが、緊張で頭が真っ白になってしまったのか、そこで始まったのは、なんとも奇妙な「あるある探検隊」だった。
「フロア歩行のと〜き〜に! 杖を使うことがありますが〜! 最初は正しく使っても〜!……」
いつまでたっても本題の「あるある」話にたどり着かない。
「ちょ、ちょっと待ってください」 松本くんが思わずストップをかけると、顔なじみのスタッフの“ピンチ”に会場は爆笑の渦に。どんな「あるある」を言いたかったのか、スタッフが説明するには——。
「杖を持ってフロア歩行のリハビリをするときに、みんな自分の脚で歩くことに一生懸命になっちゃって、いつの間にか杖が浮いていたり、引きずっていたりするんです。ぜんぜん杖の役目をなしていない、ていう。だから『杖が宙に浮いている』という『あるある』を言おうと思ったんですけど……(笑)」
利用者たちは笑顔で「あるある」とうなずいている。続いて松本くんもフォロー。
「あー、それ、確かによくありそうですね~。じゃあ、改めまして。『フロア歩行で杖を使うときのあるある』でお願いします!」とテイク2。
「歩いていると浮いてくる〜! ハイハイ……あ!」
やっぱり何を言っているかわからない。さらなる泥沼にハマる女性スタッフに、すかさず西川くんがツッコんだ。
「え……人が浮いてしまう? こわ〜(笑)。杖はどうなったんですか、杖は!」
こうして会場はさらなる爆笑に包まれて、新たな試みは大成功をおさめたのであった。
松本くん 僕たちの介護レクリエーションが、ほかの介護士さんたちと決定的に違うのは、みんなを“巻き込む系”ってことやんか。利用者さんはもちろん、スタッフさんとか、外部の人たちとか。西川くんと話していて、これが僕らの強みかな、という話になったんやね。
西川くん そうそう。それで、ついこの間の介護レクリエーションで初めて、「あるある探検隊」をスタッフさんにやってもらったんやね。スタッフさんが思う、その施設ならではの「あるある」が出てくると盛り上がるだろうと。
松本くん お笑い番組と一緒や。ゴールデンタイムは、間口を広くして誰でも笑えるネタ。深夜番組は、笑ってくれる人が限られるピンポイントのネタ。こそばゆいところに手が届くピンポイントのネタのほうが、ハマればおもしろいもんな。だから、施設では施設の人たちがわかる“あるある”が面白い。
西川くん 参加型の「あるある探検隊」は、もともと企業に呼ばれてステージをするときなんかにやっていたネタやしね。企業での営業では、事前に「うちの業界のあるあるをネタに混ぜてくれませんか?」というリクエストがあったりするんやけど、これがなかなか難しい。
松本くん あったな〜。ゴム会社でステージをやったときは「ゴムあるあるをお願いします」とかね(笑)。
西川くん あれは困ったで〜。まあ、自分らが考えても所詮、外部。やっぱりその世界のことは、その世界にいる人がいちばんよく知っている。だから、その施設の「あるある」なら、スタッフさんにお願いするのがいちばんということやね。
松本くん しかし、やっぱり新しいネタをやるのは勇気がいるな。介護レクリエーションでは、とくにやね。
西川くん 新しいネタがウケずに、せっかくのいい空気が壊れたらと思うとな……。だけど、僕らも新しいことにチャレンジしないと刺激がないしな。結果的に、利用者さんたちも、スタッフさんという知ってる人が出てくると安心するし、失敗してもツッコミやすいんやろうね。
松本くん あの日はもう1人、スタッフさんが出てきてくれて、「あるある探検隊」をやってくれたやんか。
西川くん あれは笑ったな。「利用者さん同士の会話のあるあるです」と言って、「アレとアレで通じ合う〜! ハイ、ハイ……」って。アレね、ああアレアレ、でお互いに話が通じるけど、まわりはまったくわからないという(笑)。
松本くん “おばあちゃんアルアル”や(笑)。会場もめっちゃウケて、涙流して笑ってる利用者さんもいたもんな。
西川くん ほんまやってみてよかったわ。「あるある探検隊」は、実はリズムに乗せるのがけっこう難しいんだけど、その失敗も笑いになる。和やかな時間やった。
松本くん ゆくゆくはスタッフさんだけじゃなくて、利用者さんにも参加してもらえるとええなあ。
西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!
(編集協力/ Power News 編集部)