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認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

静かに語りゆっくり歩く彼がお気に入り 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。ゆったり、ゆっくり。母の笑顔と、甘酸っぱい香りに幸せを感じて。

※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません

りんごのバターソテー

母の隣にいる私の方がハラハラするほど、母は人の好き嫌いが態度に出るようになってしまった。耳がいいので、大きな声で話しかけてくる人には反射的に反発する。威圧的に感じてしまうのだろうか。私から声量を少し落としてほしいとお願いした人もいた。
母が好んだ人の一人が、デイサービスのお迎えに来てくれる20代の男性介護士Oさん。いつもデイサービスのスタッフが、送迎車の中から「あと5分でお迎えの車が到着します」と、電話をかけてくれるのだが、Oさんは会話の間合いのとり方がうまいのか、母との電話のやりとりがスムーズ。母もOさんの声と名前をしっかり覚えているのだ。
お迎えにきたOさんは玄関で「おはようございます」と挨拶をしたあと、母が靴を履くまでは黙っている。団地の長い廊下を並んで歩く間に、母の方から「下のお名前はなんていうの?」と、Oさんに質問ができるくらい、ゆったり、ゆっくり歩いてくれた。ある時、デイサービスの施設長さんと話す機会があり、Oさんがお迎え担当だと笑顔になるとお伝えしたら、他の利用者からも同じような声を聞くという。
母がデイサービスに出かけた後、私もOさんを見習ってゆったり、ゆっくり紅茶をいれ、りんごをソテーした。

りんごのバターソテー

紅茶によく合う、甘酸っぱいりんごのおやつです。りんごの食感をほどよく残して焼きます。マスカルポーネチーズを添えるとリッチな味に。部屋いっぱいに焼いたりんごの香りが広がり、幸せな気持ちになります。

材料 2人分

りんご 1個
バター 10g
くるみ 4つ
はちみつ 小さじ2
クローブパウダー(またはシナモンパウダー) 少々
マスカルポーネチーズ 大さじ2

作り方

  1. りんごは皮をむかずに8〜10等分のくし形切りにする。くるみは粗く刻み、から煎りする
  2. フライパンを弱火にかけバターを溶かし、りんごを並べる
  3. 水分が出てきたらひっくり返し、両面を焼く。軽く焼き色がつくまで焼き、クローブパウダーを振る
  4. 器に盛り、はちみつをかけ、マスカルポーネチーズを添えてくるみを散らす

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