優しさに触れ、笑顔で食べた豚肉の蒸し料理 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。野菜がたっぷり食べられるメニューです。あのお店のように、ヘルシーな味付けで。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
2週間に1度の通院日。私は主治医に「母の睡眠時間が短く、早朝から外出しようとするので困っている。もう少し寝てもらうために睡眠薬をほんの少しだけ増やしたら、寝ぼけていたのか自宅で転倒してしまった」と、睡眠コントロールのむずかしさを訴えた。
夜中に母がバランスを崩して転倒したのは、通院の数日前だった。資源回収に出す古新聞がクッションがわりになり、ケガをまぬがれたが危なかった。その「事件」を伝えた主治医に、「お母様の安全が第一。薬で行動を制限しすぎると、本人を小さい枠に閉じ込めてしまうことになり兼ねない。焦らずにいきましょう」と諭される。冷静に考えれば、母にとっては朝、起きて外出しようとすることも、自然な行動だったのかと気づく。
私と先生の会話を横で聞いていた母は、診察室を出た後、「やさしくていい先生ね」と、うれしそうに何度も言った。
この様子なら落ち着いて外食ができそうだと、薬をもらった後、京急蒲田駅前の大戸屋へ。私はロースカツを食べ、母はやわらかくて食べやすい「野菜と豚の蒸し鍋定食」というのが定番だった。アツアツで運ばれてくるので、少し冷ましてから取り分け、ぽん酢をかけてあげると「さっぱりしておいしい」と喜び、ごはんもみそ汁も小鉢も、残さずしっかり食べた。
野菜と豚肉のフライパン蒸し
母がよく食べていた大戸屋の定食メニューをフライパン蒸しで再現してみました。冷凍かぼちゃ、水煮れんこんを使うと短時間で蒸しあがります。野菜がたっぷり食べられます。削り節とぽん酢の量を自分で調整できるのがいいところ。冷蔵庫にある野菜でぜひお試しを。
材料 2人分
豚肉薄切り 160g
白菜(長さ3cm) 250g
冷凍かぼちゃ 50g
れんこん水煮(輪切り) 4枚
しめじ 10本
ミニトマト 2個
水菜(長さ3cm) 適量
顆粒和風だし 小さじ1/2
水 大さじ3
かつお削り節 適量
ぽん酢 適量
作り方
- 豚肉は長さ4cmに切る
- フライパンに白菜を敷き、顆粒だしをふり、豚肉を広げてのせる
- 冷凍かぼちゃ、れんこん、しめじをのせて水を回しかけてふたをし、中火で5分ほど蒸す
- 器に盛り、水菜、ミニトマトをのせる。好みで削り節を散らし、ぽん酢をかける