認知症の妻が同じ品を大量買い 捨てると怒り困ります【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の妻(78歳)と二人暮らしです。妻はまだ身のまわりのことはでき、買い物も一人で行くのですが、最近はスーパーで毎日のようにヨーグルトと納豆を何個も買ってきて、冷蔵庫がすぐにいっぱいになってしまいます。消費期限が切れたものを捨てたら、怒られてしまい困っています(77歳・男性)
A.ヨーグルトと納豆という健康的な食品を買ってくるなんて、家族の健康を考えてくれている証拠です。「あなたのために精一杯考えて買ってきた」というものを捨てられたらどうでしょうか? ヨーグルトと納豆を捨てられたというよりも、自分の思いを捨てられたと感じて、怒るのも当然でしょう。
こうした妻の気持ちに配慮して、まずは感謝の気持ちを表しつつ、喜んで食べる。処分しなければならないときは、本人に見つからないようにこっそり処分する、もしくは「ごめんね、どうしても食べきれなくて。処分してもいい?」と聞くとか、妻の気持ちを考えた言動が必要なのだと思います。このように買ってくれたことへの感謝を伝えられると、それだけで何個も買ってくるような行動はなくなるかもしれません。
行動の背景には、家族の中での自分の役割がなくなっているように感じて、「このくらいしか貢献できない」という思いもあるのかもしれません。家の中で妻を必要としてあげる場面が定着すると、この行動は自然となくなる可能性もあります。
認知症になっても感情を刺激するような印象的なエピソードは、記憶に残ることがあります。もしかしたら過去に買い物を頼まれて、それを忘れてしまったことを怒られたから、ミスをしないようにたくさん買ってきてしまうということもあると思います。
ある利用者の方で、同じように野菜をたくさん買ってきてしまうケースがありました。よく知っている八百屋だったので、事情を説明して「当日に限り返品可」にしてもらうことができました。妻がいつも同じスーパーでヨーグルトと納豆を買ってくるのなら、スーパーに相談してみるのもいいかもしれませんね。
同じものをいくつも買ってしまうのは認知症の人によくあることですが、私の経験上では一時的な行動であることが多いです。相談者が妻に感謝や労いの気持ちをもっていたら、あっさり解決するかもしれません。
【まとめ】認知症の妻が同じものを何個も買ってくる
- 買ってくる妻の気持ちを考えて、感謝や労いを伝える
- 家の中で必要としてあげる場面をつくる
- いつも同じ店で買っているなら返品の相談をしてみる