「冷蔵庫が気味悪い」義母を不安にさせない作り置き術 もめない介護37
編集協力/Power News 編集部
前回、前々回とご紹介してきた「年末年始の食事サポート」問題。介護サービスがお休みになる年末年始も、義姉と夫、わたしの3人で少しずつ分担することで、自分たちの年末年始の予定と義父母のサポートを両立させることができました。
「モチをのどにつまらせるのが心配」「夫の実家のガスコンロは使えない」と頭を悩ませた雑煮問題も、ほぼできあがった雑煮を魔法瓶で持ち込むという対応でなんとかクリア。これで元旦の食事に関するミッションはオールクリア! とホッとしたのも束の間、思いがけないトラブルに直面することに。ガーン!
「冷蔵庫になんだかよくわからないものがあるの。こんなもの入れた覚えがないのに、気味が悪い……」
義母が浮かない顔でやってきて、しきりに不安を訴えます。言われるままに冷蔵庫をのぞくと、冷蔵庫には食品保存用のジッパー袋がいくつも入っています。外から見ただけでは中身はよく分かりませんが、これは義姉が用意してくれた「作り置きおかず」では……?
そう伝えると、義母は決まり悪そうに笑い、「そういえば、この間、あの子が来てたのよね」と、なにかを思い出すような素振りをします。
大変だったはずなのに、報われない作り置き
「いったい何をしているのかしらと思って聞いたんだけど、あの子ってせっかちなところがあるでしょう。『忙しいのよ』なんて言って、教えてくれないの。パーッと来て、パーッと帰っちゃったわ。目が回りそうよね」
どこまで思い出しているのか、適当に話を合わせているだけなのかわかりませんが、義母は臨場感たっぷりに、義姉の様子を教えてくれました。
冷蔵庫の扉を見ると、義姉が手書きした献立表のようなものが貼ってあります。どうやら義姉としては、なにを作ったのか、どの順番で食べてほしいのかを貼り紙で伝えたかったようなのですが、肝心の義母はまるで無関心。「なんかゴチャゴチャ書いていたみたいだけど、意味がわからないのよ」とバッサリ。意図が伝わっていなかったようです。
年末の忙しい最中、何品も料理を作るのは大変だったはずなのに報われない……と思う反面、義母の言うことにも一理あります。
日常のルーチンは問題なくできる義父母も
冷蔵庫の中のジッパー袋には、中身の説明や作った日付などの記載がないため、どれになにが入っているかひと目ではわかりません。献立表と照らし合わせながら、該当するメニューを探すのは少々骨が折れる作業です。さらに、目当てのメニューを見つけても、皿など別の容器に移し、電子レンジで温めるというステップが待っています。
義父母はともに、調理作業がどこまでできるかは別として、台所に立つことはおっくうがらず、電子レンジもご本人たちなりに使いこなしていました。しかし、それが可能なのはあくまでも、日常のルーチンになっているからこそ。
いつもの食パンであれば、冷蔵庫から取り出して、オーブントースターで焼くことができる。
でも、普段の生活とは異なる手順が加わると、一気に難易度は上がります。
ジッパー袋が半開きのまま、電子レンジにかけてしまい、熱々のおかずが飛び散って大惨事! なんてこともありえます。実際、冷蔵庫の中のジッパー袋はしっかり閉まっていないものもありましたから、運が悪ければ、冷蔵庫内にスープや煮汁をぶちまけていたかもしれません。
義姉が料理をしていたのをケロリと忘れた、義母のもの忘れと警戒心に助けられたとも言えます。
義母の不安は、ワイワイおしゃべりしながらの楽しい台所作業で解決
さて、問題はこの作り置き料理をどうすれば、有効活用できるのか。
夫と相談し、まずは1食分ずつ小分けできる容器を入手し、移し替えることにしました。店が開いてないとお手上げでしたが、幸いなことに元旦から駅前の大型スーパーがやっていてくれたため、容器は無事入手できました。
ジッパー袋から移し替える際には、少しでも食中毒リスクを減らすために電子レンジで再加熱。ついでに、義姉が作った献立表と照らし合わせながら中身も確認します。「なにかお手伝いすることない?」と所在なさげな義母には、容器にラップをかける作業をお願いし、私はマジックペンでラップに「中身」を書き込む担当。念のため、「食べてもいい期限」も赤字で記入しました。
なにもかも捨てたくない義母の性格を考えると、「あの子がせっかく作ってくれたんだから」と後生大事にとっておいた挙げ句、悪くなったタイミングで食べてしまうことも十分考えられるためです。
ヘルパーさんたちとの情報共有ノートにも、作り置き食材が冷蔵庫の中に入っている経緯とあわせて、期日を過ぎたらさりげなく処分をお願いしたい旨を伝言メモとして残しました。
そして、義母と冷蔵庫から容器を取り出し、電子レンジでの温めるまでの一連の動きを何度かリハーサルもしました。「完璧! すごくわかりやすいわ。これなら大丈夫よ」と義母は打って変わって自信満々。
もっとも、どこまでこれらの「作り置きおかず」が、“温めて食べる”まで到達できたのかはわかりません。大半は冷蔵庫のなかで期限切れを迎えた可能性も大いにあります。それでも、「入れた覚えがないのに……」という義母の不安感が、ワイワイおしゃべりしながら台所作業の楽しさに転じたのは、それだけで十分意味がある時間だったようにも思うのです。