介護の裏ワザ、これってどうよ?

でた構ってちゃん!キャラ変も孫の解釈で乗り越える これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母が認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

「重いっ・・・」「Tシャツ・・・」

暴君の気まぐれ? 一気に“か弱いキャラ”にキャラ変!?

うちの認知症のばーちゃんは、常に暴走しているというわけではありません。タイミングによってはゆずことの会話でも意思の疎通が比較的できていたり、一緒に洗濯物を干したり家の掃除ができる時もあって、日常生活の中ですごくムラがあります。そして突然、“なにもできないか弱いキャラ”に豹変することも……。

とにかく、口から出るのはいつもと真逆の言葉ばかり。例えば、直前まで洗濯物を干していたにもかかわらず、「これはなんだい。すごく重いね」とTシャツをつかんだまま不思議な顔をしたり、ほうきを持ったまま「これはどう使えばいいのか分からないよ。やっておくれよ」と懇願する。
頼む用事がなくなると、今度は周りをキョロキョロと見回して、手あたり次第「これは何だい?」「どう使うんだい」と聞きまくります。その手に持ったリモコンを見てつぶやくことも……。「さっきまで手慣れた手つきで、しかも超高速でチャンネルをコロコロ変えてたじゃん」と思わず突っ込みそうになりつつも、必死に訴えているその姿は至って超本気なので何も言えなくなります。

母(娘)の前だからこそ、遠慮なくダメダメ人間になれる

ばーちゃんをじっと観察していると、か弱く何もできないキャラが発動するのは、とくに母やオバの面前が多かったような気がします。ふと「母親に甘える子どもに似ているな……」と。気心が知れた仲だからこそ、好き勝手言えちゃう。
以前、「大泣きして『あたしが嫌い!?』ばーちゃんの返事は…」で紹介しましたが、小さな子は、すごく身近な存在で頼りにしている母親にだけ、駄々をこねたり甘えられたりするといいます。その姿にすごく似ていたのです。ワガママを言うことで相手に甘えているのだと。それは、うまく気持ちを伝えられなくなった、ばーちゃんなりの愛情表現だったのでしょう。

もちろんゆずこの前でもか弱いキャラになったり、「〇〇ができないんだよ」と色々と甘えられる(頼られる?)のですが、圧倒的に母やオバの面前が多い。
「やっぱり孫より娘の方が本音で甘えられるのかな」と、いつも一緒にいるだけにちょっと嫉妬のような、どこか寂しさを感じたゆずこ。でも、ばーちゃんはばーちゃんなりに戦っているのかもしれない。
色々と不本意に記憶が薄れていって、思い出も欠落していく中で、本人なりに強がって、気を張って、時々ちょっと暴れちゃうけど、必死に「ゆずこのばーちゃん」でいようと頑張ってくれていたのかもしれません。

そう考えると、なんだかばーちゃんがいじらしく見えてくる。不意にウルっときましたが、ばーちゃんのハンカチで思いっきり鼻をかんでおきました。洗うのはわたしだけど。くそ~、いろんな意味で泣かせるぜ。

『孫の前ではいいおばあちゃんでいたいけど、でもどうしたらいいのかわからない・・・』ばーちゃんの心の声(想像)、その結果「わ、わたしは一人で何でもできる!!」

認知症はなにも特別じゃない

見方によっては「なんで私にだけワガママを言うの!」とマイナスにとらえる方ももちろんいるでしょうが、相手を観察して想像すると、また違う景色が見えてきます。このゆずこなりの勝手な解釈ですが、専門家はどう見るのでしょうか。

認知症の在宅医療推進や認知症情報の発信に積極的に取り組み、『認知症の人を理解したいと思ったときに読む本 正しい知識とやさしい寄り添い方』(大和出版)の監修を務める、湘南いなほクリニックの院長・内門大丈先生はこう語ります。

「ワガママや“構ってちゃん”のような言動を観察して、『もしかして』と新たな気づきを発見したのは素晴らしいですね。『認知症』と聞くと、特有の症状があるのだろうとか、『認知症だから○○なんだ』と特別なものとして思いがちだけど、実は認知症であってもなくても、信頼や安心感から甘えられる人には甘えられるだろうし、なかなか気を許せない人の前ではつい意地をはってしまうなど、僕たちと変わらないんですよ。その視点を介護する家族や世間の方々が共通して持つことができたら、認知症の方に対する認識もまた変わると思います」

先生から「介護をしながらよくそんな視点を持てたね」とおほめの言葉を頂いたゆずこですが、なによりもそう考えた方が自分が楽でもあり、「この言葉の背景には何があるのかな」と考える、元々の記者魂があったからこそかも知れません。げへへ……。

内門大丈先生
湘南いなほクリニック院長。いなほクリニックグループ共同代表。日本老年精神医学会専門医・指導医。日本認知症学会専門医・指導医。認知症の在宅医療推進や認知症情報の情報発信に積極的に取り組んでいる。『認知症の人を理解したいと思ったとき読む本  正しい知識とやさしい寄り添い方』(大和出版)監修。

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