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介護の裏ワザ、これってどうよ?

ひきこもり祖父がホームセンターのあの子に夢中 これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母が認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

「いってぇー」『お先に失礼しまーす』転んでうずくまるじーちゃんを置いて帰る賢い犬だったとか・・・

ワンちゃんとじーちゃん、時々ばーちゃん

ときどきじーちゃんとばーちゃんを車で外に連れ出して「今日のレクリエーションは、トイレットペーパーと柔軟剤をゲットしに行くこと! フゥー!(掛け声だけ盛り上げている)」など、ただの買い物をイベントにしていたゆずこですが、ある日そんな“レク”で立ち寄ったホームセンターでこんなことがありました。

認知症になってからは、自発的に何かに興味を持ったり行動したりということが極端に減ってしまったじーちゃんが、ワンちゃんや猫ちゃんがいる動物コーナーの前でふと立ち止まり、ここ最近見たことがないような「ふにゃぁあああ」と柔らかく崩れ落ちそうな笑顔を見せていたのです。

その視線の先でちょこんと佇んでいたのは、まだ小さくて活発そうなワンちゃん(コーギー)。そしておもむろに「懐かしいなぁ……」とつぶやくじーちゃん。あれ? コーギーなんて飼ったことあったっけ?

帰宅後、母に電話で聞いたところ、わたしが生まれる前にじーちゃんとばーちゃんがコーギーにそっくりの日本犬を飼っていたという事実を初めて知りました。さらに、じーちゃんがものすごく可愛がっていたということも。そのワンちゃんの効果なのか、それまで「めんどくせえな」「俺は(〇〇に行かない、〇〇しなくて)いいよ」とひきこもりがちだったじーちゃんが、うってかわって「今日も動物のところへ連れていけ」と毎日せがむようになりました。それも一日に5回以上。連れて行って帰宅した直後にも催促されまくり。その結果、わたしは動物コーナーに設置されたベンチでたびたび仕事の原稿を書くはめになりました。うん、騒音が心地いい。心地いい……(必死で自分に言い聞かせるゆずこ)。

思い出のピースを必死につなぐ

ただ、毎日(日に何度も)長時間居座ってはお店の邪魔になってしまうので、混雑時を避け平日のお昼どきを狙って足しげく通う、ゆずことじーちゃんばーちゃん。

実際にワンちゃんや猫ちゃんなど動物たちが、どれだけ認知症にいい影響をもたらしてくれるのか、アニマルセラピーの効果の科学的根拠などには詳しくないゆずこですが、現に目の前のじーちゃんの笑顔は格段に増えて、ばーちゃんも犬を飼っていたころの昔話を楽しそうによくするようになりました。

ところどころ記憶が飛んでいたり「絶対にこれはばーちゃんの作り話だな」と思うようなぶっ飛んだ内容もあるのですが、頭の中の大切な大切な思い出のピースを必死につなぎ合わせているかのような……。普段は不安や寂しさなどが重なって暴走してしまうことも多いけれど、ワンちゃんをきっかけに一瞬だけ過去に帰って、心の奥底にある大切な宝箱の中身を見せてくれるばーちゃん。なんかもう、それだけで通う価値がある。 

久しぶりに全員が笑顔で、優しく居心地のいい時間を過ごしていたゆずこ一行ですが、ふとばーちゃんを見ると背後に大きなブルドックが。

やばい、どうしよう。すごく似てる。ばーちゃんに。

でもいま笑ったらせっかくいい雰囲気が壊れてしまう。でも似てる。やめて、並んでこっち見ないで!と、あわや腹筋崩壊寸前に。

なんとか堪えて幸せなひと時を満喫しました。が、帰宅後「ばーちゃんがブルドック似ということは、孫のわたしも似てる……?」と鏡の前で複雑な気持ちになったゆずこでした。

申しわけないケド、激似のばーちゃんと犬『ばーちゃんと犬、ずっとこっち見てる・・・』それにしても、にてる・・・

セラピー犬、セラピーロボット犬、セラピーアザラシ?

ゆずこのじーちゃんばーちゃんにはいい効果をもたらしてくれた動物たち。
認知症の在宅医療推進や認知症情報の発信に積極的に取り組み、『認知症の人を理解したいと思ったときに読む本 正しい知識とやさしい寄り添い方』(大和出版)の監修を務める、湘南いなほクリニックの院長・内門大丈先生はこう分析します。

「動物がもたらす癒しの効果も影響していたのかもしれませんが、おじいさんが犬を見て笑顔が増えたのは、回想法が近いかも知れません。回想法とは、写真やモノなど何かきっかけとなる物から過去を思い出し、精神的な安定をはかるというものです」

なんでも、認知症のリハビリテーションにも用いられる手法の一つで、自分がどのように生きてきたか「自己の再確認」ができたり、過去を振り返ることで自信と誇りを取り戻すなどさまざまな効果があるそうです。

「おじいさんとおばあさんは昔動物を飼っていたからこそ、その効果が発揮されたのでしょうね。安らぎと楽しみを与えてくれるという観点なら、最近では人工知能が搭載されたセラピーロボットなども注目されています。例えばアザラシの姿をした「パロ」など。動物が入れない施設でも活躍しているようです」

「パロ」は、「もっともセラピー効果があるロボット」としてギネスにも認定されているのだとか。

自分が過去に愛した動物たちが、たとえロボットでもまた隣に寄り添ってくれる未来だとしたら、認知症のリハビリテーションもまた新たな光が増えるような……。いろいろな意見があるとは思いますが、ゆずこがばあちゃんになったときに大好きだった動物たちとまた過ごせたら、より充実した日々を過ごせそうな気がしました。

内門大丈先生
内門大丈先生
湘南いなほクリニック院長。いなほクリニックグループ共同代表。日本老年精神医学会専門医・指導医。日本認知症学会専門医・指導医。認知症の在宅医療推進や認知症情報の情報発信に積極的に取り組んでいる。『認知症の人を理解したいと思ったとき読む本  正しい知識とやさしい寄り添い方』(大和出版)監修。

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この連載について

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