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急変は読めない 介護者の遠出予定はどう立てる?もめない介護31

電車を降りる人のイメージ
コスガ聡一 撮影

「介護が始まってから、思うように旅行に出かけられなくなった」という悩みを耳にします。

留守にしている間に何かトラブルが起きたら……と思うと、遠出をする気にならない。私自身も介護が始まったばかりのころ、そんな時期がありました。

ただ、思い切って泊まりがけで出かけたら、憑きものが落ちたように気持ちがラクになりました。少々強引にでも、介護から離れる時間を持つことで、必要以上に「私がやらなきゃ」と抱え込み、のめりこんでいた自分に気づくことができたのです。

それまでまったく意識していなかったけれど、親の老いやその先にうっすら透けて見える死の気配を恐れて、介護を最優先してしまうことがある。そんな自分の行動特性を知ったおかげで、にっちもさっちもいかなくなる前に、介護と距離を置く時間も持てるようになりました。

しかし、ここに来て、また迷いが再浮上しています。義父の体調が思わしくないのです。
つい先日、義父は大量下血で緊急入院しました。精密検査をしましたが結局、明確な理由はわからないまま、退院することに。その後も、熱は上がったり下がったりを繰り返しています。

いつ状態が変わるかわからない今、遠出は可能なのか

ご本人は「体調は良くなっている」「痛いところはどこもない」と言いますが、血液検査の数値を見ると楽観できません。食欲にもばらつきが出てきて日によっては食事をほとんど残す日も出てきました。

入院していた総合病院で、また診てもらったり、ドリンクタイプの栄養補助食品を差し入れたり……。ただ、「おなかがゆるくなるから飲みたくない」と断られることも少なくありません(エンシュア・リキッドをはじめとする経腸栄養剤は、はなから「マズいからイヤ」と拒否でした)。そんなことを言わずに……と家族は祈るような気持ちですが、91歳という年齢を考えると、飲みたくないものを拝み倒して飲ませるのは酷なような気がします。

そして、いつ状態が変わるかわからない今、どこまで離れていいものか……。

そんな折り、家族で介護情報を共有するために作成しているLINEグループに、義姉からこんな問い合わせがありました。

「11月中旬に祖父の3回忌があります。父の様子を見ると、遠出をするのに不安を覚えます。出席して母に様子を伝えると喜ぶとは思うのですが。行くならそろそろ飛行機を予約しないといけないのですが、ご意見を伺えればと思います」

迷う気持ちはわかります。でも、そんなことを言われても、来月どうなっているかはわからない……。どう答えたらいいものか、迷いました。

どこにも行かず、じっと待機していても、何ができるわけではありません。そもそも義父は危篤というわけではなく、ただ、「いつ何か起きても不思議はない」ということがよりリアルに感じられるターンに差し掛かっているだけなのです。

まずは夫婦ですり合わせ

夫と話し合い、義姉のことはさておき、まず自分たちがどう対応するかを整理してみることに。

現在、再受診などやるべき対応はすべてやっています。義父の体調が回復に向かうのか、それとも衰弱の一途をたどるのか、どういう形で移行していくのか、そのスピードも含めて予測がつきません。

これまで何度か、「もう無理かもしれない」という局面をヒラリとくぐり抜け、よみがえってきた義父ですが、今度ばかりは難しいかもしれません。でも、ご本人の気力と気合いは十分。えいやっと死線をくぐり抜けてくれる希望の光もまだあります。

夫の意見はこうです。
「何が起きるか起きないかもわからないけれど、直接できることは少ない状況で、旅行や出張を自重するのは単なるあてずっぽうだと思う」

普通に仕事をするつもりだと言います。実際のところ、近々立て続けに地方出張があり、1週間近く、東京を離れるそうです。

私はちょうど京都で開催された学会から帰ってきたばかりで、向こう2カ月ぐらいは都内を離れる用事はありません。でもその後、関西への地方出張が控えています。もちろん、予定通り行くつもりです。

家族がモメずに乗り切れる道筋を探って

義姉のLINEメッセージを見たときは困惑しましたが、夫婦の方針をすり合わせるきっかけになったのは結果オーライ。ベースの対応が決まれば、あとは状況に応じて少しずつ見直していけばいいと思えるので、精神的にもラクです。

そして、義姉への返信は夫にお願いしました。
「飛行機や新幹線のチケット自体はキャンセルもできるし、万が一、東京を離れたときに急変があったとしても、当日または遅くとも翌日には帰京できるという考え方もあるかなと思います」

急変のリスクも含めて伝えたつもりですが、いざ、旅先で急変に遭遇したら、「アンタたちが『大丈夫』っていうから来たのに……!」とキレられる可能性もゼロではありません。義姉からはすぐ「ありがとう。行く前提で準備を進めます」と返信があり、良かったような不安なような……。

何もかもがわからないことだらけですが、なんとか家族がモメることなく、お互いキレることなく乗り切っていける道筋を引き続き探っていきたいと思います。

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