夫が若年性認知症に 幼い子どもがいじめにあわないか 専門家が解説
構成/中寺暁子
若年性認知症の支援活動に関わってきた高橋惠美子さんが、若年性認知症の様々な悩みに答えます。
Q. 夫(52歳)が3年前に若年性認知症と診断され、昨年退職しました。私や子どもたちが仕事や学校に行っている日中、夫は一人で外をウロウロしているようで、先日は警察に不審者扱いされてしまいました。地域の人たちに話して理解を得たほうがいいと思う一方で、まだ小学生と中学生の子どもたちがそのせいでいじめを受けるのではないかと不安もあり、悩んでいます。(50歳・女性)
A.地域の人たちに話したほうがいいことは理解していても、実際は言いづらいですよね。お気持ちよくわかります。私も20年ほど前、若年性認知症の夫を介護していることを近所の人にずっと言えず、夫の病気を隠していたのですが、あることをきっかけにいよいよ言わなくてはならなくなり、1軒1軒伝えに行きました。すると、みんな同じような反応で「おかしいなとは思っていたけれど、こちらからは聞きづらかったから話してくれてよかった。これからは気を付けて見るわね」と言ってくれました。そのとき「もっと早く伝えておけばよかった」と後悔したものです。地域の人たちも何となく様子がおかしいな、というのは感じているんですよね。率直に話したほうが何かあったときに助けてもらえますし、プラスになることは多いと思います。実際に、道に迷った若年性認知症の人を近所の人が見つけたという事例もあるのです。
また、親が若年性認知症のために子どもがいじめられたという話を私は聞いたことがありません。今はいじめに対して不安を感じるかもしれませんが、認知症だけではなく、うつ病などの精神疾患や不登校など、さまざまな事情で社会に出られない家族がいる家庭は、決して珍しくないと考えてみてください。どんな人でも、大なり小なり誰かの助けを借りて生きています。地域の人たちに助けてもらえる部分は、気兼ねなく助けてもらいましょう。負担が少しでも軽くなるといいですね。
【まとめ】家族が若年性認知症であることを地域の人に伝えたいが、子どもがいじめを受けるのではないかと不安があるときは?
- 地域の人も異変を感じているもの。率直に話したほうが手を差し伸べてもらいやすい
- 社会に出られない家族がいることは珍しいことではないと理解する