吉本渦中に出版会見 トントンサスサス知ってはる?あるある探検隊の活動報告5
構成/福光恵 写真/レギュラーのマネジャー
「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま介護施設をまわっています。テレビや劇場の一般客相手と違って、施設の利用者さんたちを笑顔にするのは、やっぱり難しい! そんな2人が見つけた、今日の介護現場の“あるある”は――。
片方の手をグーにして太ももの上でトントン。もう片方の手は、パーにして太ももをサスサスとさする。そして手を叩く合図とともに、左右の手の動作を入れ替える――。
「トントンサスサス」は、認知症予防トレーニングになる定番のレクリエーションとしても知られる。レギュラーの2人は、これに芸人ならではのお笑いを加えてアレンジ。
まずはみんなで「かたつむり」の童謡を歌いながら、太ももをトントンサスサス。そこで松本くんが利用者たちの間を歩き回り、好きなタイミングで手を叩く。
「いきますよ、いきますよ」と、いまにも手を叩きそうなそぶりを見せながらフェイントを入れたり、ちょっと雑談するふりをして安心させたところで連続して手を叩いたり。そこに「そんなもんできるかい!」と西川くんのツッコミが入る。施設訪問の現場で試行錯誤の末に生み出した“鉄板ネタ”である。
高齢者でなくとも、なかなか難しいこの遊び。ある施設では、こんな“現象”が。
♪でんでん、ムシムシかたつむり〜、おまえの頭はどこにある〜♪ハイ!
パチンと手を叩く松本くんの合図で、左右の動作を入れ替えるはずが……。なぜか隣の人の太ももをサスサス。すると、サスサスされた隣の人も、その隣の人の太ももをサスサス。
「いつのまに隣の人をサスサスする連鎖が!」
そんな松本くんクンの指摘で我に返り、自分の間違いに思わず笑い出す利用者たち。
「気持ちはわかりますわ〜」
2人のフォローに会場は爆笑に包まれるのであった。
西川くん 今日は、ちょっとお伝えしたいことあるんやね。僕らの本『レギュラーの介護のこと知ってはります?』(竹書房)が出版されました〜。
松本くん は〜、やっとや。
西川くん ほんまに「やっと」というのがぴったりやね。思い返せば2016年から編集作業が始まってもう3年。何度お蔵入りを覚悟したことか。
松本くん もともと僕らと同年代の編集者の発案で始まった本やったやんか。彼は、お父さんの介護を始めて、いろいろ本を手に取ってみたけど、どれも内容が難しかったと。それで、もっと自分がほしい情報を入れた本にしたいという気持ちで始まった。
西川くん ところがそのお父さんの病状が悪くなって、途中で介護休暇を取りはった。で、この本の作業も1年くらいお休みに。そんなリアルな介護者と一緒に作った本だけに、内容も最初の予定からずいぶん変わったね。
松本くん 掲載用の写真撮影や関連動画までつくったのに、ぜんぶ撮り直しになったもんな。たしかに作り始めた最初のころは、介護の本だから砕けすぎてもダメだと思い込んでいたから、けっこう固い内容やったんとちゃう? 笑いの要素を加える加減がわからなかったというか。
西川くん 僕らが介護の活動にたどりつくまでのストーリーが中心やったしね。
松本くん でもこの3年の活動を通して、僕らも介護レクリエーションに自信がついてきたしな。お笑いの色も少しずつ加わって、僕らがアレンジした「トントンサスサス」みたいなレクリエーションもたくさん紹介して、ネタ本みたいな側面もできた。
西川くん 僕らも施設に行くたびにレクリエーションを試して、どんどん改良しているからね。この3年でそういうオリジナルのレクリエーションもまとまった数になった。最終的に介護の入門書的な本になったよね。
松本くん 介護していると孤独になりがちだけど、編集者からは「自分1人じゃないんだっていう本にしてほしい」って言われたやろ。介護ってそんな難しいことじゃない。親がちょっと忘れっぽくなったなあというとき、これから介護をする世代に手に取ってもらいたい本になったと思う。ただ、発売時期が……。
西川くん この3年間、なかなか発売されなかったのは、会社から「一番いいタイミングを待っている」と言われてたこともあるもんな。『火花』(文藝春秋)や『大家さんと僕』(新潮社)など、多くのヒット本を生んできた吉本やもの。その商売人のカンを信じてましたけど。
松本くん ほかの芸人さんの本の出版時期とかぶっちゃいけないとか、商売のプロこその「本を売る法則」っていろいろとあるんやろな、と。それが「2週間後に出しますよ」と突然言われて、その発売予定日が7月31日。なんと、世の中を騒がせた吉本“直営業”問題のさなかという大変なタイミングで(笑)。それで発売前に急遽、会社にメディアに集まってもらってインタビューを受けたりした。
西川くん そうそう。その日、僕らが会社に着いたら黒山の人だかりで、会社もずいぶん記者さんを集めてくれはったんやなあと感動していたら……極楽とんぼの加藤(浩次)さんが会社に来るというので、マスコミが大勢張り込んでいただけやったという(笑)。
松本くん 僕ら裏口からコソコソ入ったもんな。でも、西川くんは喜んでたやないか。
西川くん 善し悪しは置いておいて、吉本が注目された時期だったのは間違いないやん。そんなときに僕らの本がたまたま出たっていうのは、僕はありがたかったけどな。
松本くん 結局あの日、僕らの取材に来てくれはったのは数社やったけど、もしかしたら普段よりも多かったのかも。
西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!
(編集協力/ Power News 編集部)