もめない介護

他人の心配事は時にスルー 早期対応との見極め方 もめない介護26

コスガ聡一 撮影

認知症介護にかかわっていると、さまざまな不安にぶつかります。

これまでにない親の言動に「認知症が進んだ……?」と不安になるし、「食欲がない」「よく眠れない」「体を動かすのがおっくう」などの不調に気をもむのも日常茶飯事です。

「自分はどうにかなってしまったのだろうか」という、認知症当事者の不安にどう寄り添うか。それは、介護をするうえでとても大切なことですが、時には当事者である親は比較的落ち着いているように見えるのに、周囲が不安を覚えて浮足立ってしまうこともあります。

「母は“泥棒に入られないように”と言って、寝室にものを積みあげています。転倒が心配です」
「親に製氷機を洗う気がなさそうなのが心配です。カビが生えても気にしそうにありません」
「なくした通帳が悪用されていないか心配です」

義姉から時折LINEで送られてくる、“心配です”メッセージ。最初はその真意がわからず、戸惑いました。「心配だから、対処してほしい」というリクエストなのか、それとも……? 

義姉の「心配です」には緊急性がないものも

こちらとしてはもし、「対応の引継ぎ」だとすれば、まずは現時点で親とどのようなやりとりがあったのかを教えてほしい。親に心配だと伝えたのか、伝えていないのか。伝えたとすれば、どのように伝えたのか。そのとき、親の反応はどうだったのか。

しかし、義姉に質問しても、あまりはっきりとした答えは返ってきません。「まだ親には伝えていません」「見かけて気になっただけです」といった回答がほとんどでした。

単刀直入に「何もかも丸投げされても困ります」と伝えてみようか。いや、それだとさすがに角が立つので「まずは親と話してみてください」と言ってみるのはどうか。夫と対応策を相談してみたものの、なかなかいい着地点が見つかりません。

悩ましいのが、義姉が「心配です」と注目していることのなかには、必ずしも緊急性が高くないものも含まれているという点です。心配する気持ちはわからなくもないけれど、やみくもに不安を親にぶつけると、今度は親の気持ちが不安定になり、新たなトラブルを引き起こす懸念もありました。

悩んだ末に、わたしたちがとった選択肢は「いったん保留」。心配ごとを聞いても、すぐに対応しようとするのをやめました。

他人の不安を拭うためではなく、親の安全と生活のために対処

もっとも、中にはすみやかに対処したほうがいいものもあります。たとえば、「転倒が心配」というようなケース。取り越し苦労の可能性はあるけれど、万が一、転倒骨折してしまったら、義父母の暮らしに与えるダメージが甚大です。こうした心配事に遭遇したときには、なるべく早めのタイミングで、ケアマネさんをはじめとする介護・医療の専門職の方々と情報共有しながら、対処していきます。

でも、それはあくまでも、親の安全や生活の質を検討した上での対応です。ほかの誰かに「心配だと言われたから」という理由では行動を起こしません。そう決めてから、驚くほど気持ちがラクになりました。他人の不安に振り回される不快感から解放されるからかもしれません。

相手の不安や心配を解消するためのアクションも、最小限に留めるようになりました。

以前は「そこまでやる必要はない」と夫に呆れられながら、「心配しなくてもいい」「不安を覚える必要はない」といった説明や説得を試みていました。しかし、それは今になって思えば逆効果でした。相手に「心配だと伝えれば、あとは何とかしてもらえる」と思わせてしまう環境を整えることになるからです。

認知症当事者の不安は、積極的に解消を

これが認知症当事者である親が不安を訴えているような場合は、話は別です。むしろ、積極的に〈言えば、なんとかしてくれる〉という信頼感を勝ち取ったほうが、困りごとの情報をいち早くキャッチできるようになり、早期対応が可能になります。

介護にかかわっている以上、不安や心配の種は尽きません。だからこそ、対応すべき困りごとと、そうではない困りごとを選別し、優先順位をつけて対応していくことが重要です。自分や家族の不安とどう向き合うかを整理しておくことは、介護によるバーンアウトを回避するための最初の一歩です。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について