母に頼む砂糖の加減 秋の夜長にコトコト小豆 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。ゆっくりコトコト。心を穏やかにする時間です。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
秋の夜長にひとり、赤ワインを飲みながら本を読もうと思い、いつもより早いが午後8時に母を寝室に連れて行き、布団をかけて明かりを消した。心の中で「このまま朝までぐっすり寝てくれますように」と祈りながら私は「おやすみ」を言う。できるだけ音を立てないように台所を片付けていたのに、30分もしないでベッドから起き上がって来てしまった。ありゃりゃ、さすがに寝る時間が早すぎたのかもしれない。
ひとりの時間はあきらめて、母と一緒に小豆を煮ることにした。
私が子どもの頃、母はよく豆を煮てくれた。黒豆、花豆、小豆、大豆などいろいろな煮豆が冷蔵庫にあった。もう母はそのことを忘れてしまったようだけど、豆をボウルに入れてやさしく、さっと混ぜながら水を替えて洗う手つきは、昔のままだ。
豆の煮え具合や、砂糖の量は母に決めてもらった。煮た小豆は翌日からしばらくおやつに出す。
日付が変わる頃、再び母を寝室に連れて行き、私は小豆を煮た香りに満ちた台所で、煮小豆をつまみに1杯だけ赤ワインを飲んで寝た。
煮小豆のクリームあんみつ風
小豆は水に戻さずにゆでても煮えむらがないので、思い立ったときに煮ることができます。煮小豆を作るときは焦らずゆっくり。コトコト煮ているうちに気持ちが落ち着いてきます。煮小豆はそのまま食べるのはもちろん、アイスクリームと缶詰の果物を一緒に盛り合わせればクリームあんみつ風のおやつになります。
材料 作りやすい分量
小豆 100g
砂糖 80g
塩 ひとつまみ
バニラアイスクリーム 適量
黄桃(缶詰) 適量
さくらんぼ(シロップ漬け) 適量
作り方
- さっと水洗いした小豆を、たっぷりの水に入れて強火にかけてゆでこぼす。アクを洗い流して鍋に戻し入れ、2回目は約5倍(500ml)の水で再びゆでる。煮立ったら弱火にし15分ほどで、ゆでこぼす
- 鍋に小豆と約5倍(500ml)の水を入れて中強火で1時間ほどゆでる。途中でアクをとり、ときどき水を足して小豆が水面から出ないようにする
- 砂糖、塩を加え、15分ほど弱火で煮たら火から下ろし、冷めるまで置いて味をなじませる。保存用器に入れて4日ほど冷蔵庫で保存できる
- 器にアイスクリーム、3の煮小豆(適量)、黄桃、さくらんぼを盛りつける