認知症の母を介護する独身の私 施設を勧めるケアマネと対立 専門家が助言
構成/中寺暁子
介護事業に携わる井上信太郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の母(75)と二人で暮らしています。私が仕事に出かけている日中はデイサービスに通ってもらっていますが、一人っ子で独身、頼れる身内がいない状況で無理をしてしまったのか私が体調を崩してしまいました。それでも何とか自宅で介護していきたいと思っていますが、担当ケアマネジャーは施設への入所をすすめるばかり。こちらの気持ちをくんでくれません(45歳・女性)
A.このケアマネジャーは、施設への入所に対していいイメージをお持ちなんでしょうね。同じようなケースで施設への入所がうまくいって介護者が心身の健康を取り戻したといった経験があるのかもしれません。気持ちをくんでくれないということですが、他人の気持ちをくむのは難しいことです。娘としての思いをケアマネジャーにちゃんと言葉で伝えられていますか? もし伝えられていないのであれば、それはなぜでしょうか? ケアマネジャーの話し方が高圧的だったり、専門性をふりかざしたり、一方的だったりしたら伝えにくいかもしれませんね。ただ、ケアマネジャーもそんなつもりはなく、熱心に説明しているだけなのかもしれません。まずはケアマネジャーに直接、気持ちを伝えづらい理由を話してみてはいかがでしょうか? 話し方に問題があることに気づいてもらえたら、その後のコミュニケーションもうまくいくかもしれません。ケアマネジャーに気づいてもらえず、意見を言いにくいままであれば、事業所や地域包括支援センターなどで相談してみるのもいいでしょう。
相談者は頼れる身内もいないなか、一人で家族としての役割を果たそうとがんばっておられて、すごいことだと思います。でも体調を崩されてまで、自分で介護していきたいと思われていることが、気になります。あなたの人生はあなたのものです。お母さんのものではありません。
私が運営する施設の利用者さんの中にも、本人と家族が“共依存”のような関係になってしまうことがよくあります。親や配偶者を介護することに依存し、仕事をやめてしまったり、体調を崩したりしながらも、介護を続けようとするケースです。
一度きりの人生を親の介護のためだけに過ごしていいのでしょうか? これを機にあなた自身の生き方を見つめ直してほしいと思います。ひょっとしたらケアマネジャーも相談者の姿をそばで見ていたからこそ、お母さまの施設への入所を提案しているのかもしれませんね。
【まとめ】ケアマネジャーに家族の気持ちをくんでもらうには?
- 家族としての気持ちをはっきりと伝える
- 伝えにくければ、その理由を話す
- ケアマネジャーが家族のことを真剣に考えた結果の言動かもしれないことを理解する