介護の裏ワザ、これってどうよ?

船頭多くてばーちゃん放置 船の行方はLINEでチェック これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

「ゆずこがついにブチキレて裸のばーちゃんを交番に連れていったって本当?」『は? なにそれ、めちゃくちゃやんけ』

噂に尾ひれが付きまくって、家族の雰囲気は最悪に

たまに認知症の症状がおさまって、ばーちゃんは比較的穏やかになるときもあります。また、たまに遊びに来る親せきには「お客様」待遇なのか急に愛想がよくなる……。
以前の記事では、「家族間の介護の溝に、ばーちゃんのパパラッチ激写」ということで、解決策の一つとして「スマホの写真や動画を駆使して、SNSで一斉送信。現場の状況を同じ温度で拡散する」という方法をとりました。これはすごく効果的だったのですが、さらに予想外のプラスの効果ももたらしてくれたのです。

それは一斉拡散できるグループLINEを使って、介護する側の足並みをうまく揃えられるということ。

例えば、「介護される人(A)が介護してくれる人(B)のいうことを聞かないで、『お風呂にも入りたくない!』と暴れている。どうしよう」という問題を家族間で相談したとします。その話を電話やメールなどで伝言ゲームのように回していくと、いつの間にかそこにそれぞれの想いや疑問などプラスαの要素がごちゃごちゃと入ってきて、まったく別の話になってしまうことも多々あるんです。

人から人に伝えていくと、こんなことも起こります。
◆家族CからDへ
「AがBのいうことを聞かないで、お風呂に入らず暴れてるんだって。でも昔からBは口調や性格がキツイから、なにかAがカチンとくるような言い方しちゃってるんじゃないかしら」
◆家族DからEへ
「AがBのいうことを聞かないで暴れてるらしいけど、結構Bの言い方やあたりがキツイみたいよ……」
◆家族EからFへ
「Bの言い方や態度がきつすぎて、Aが暴れちゃってるみたい。かわいそうよね……」

なんとCからFに伝わるまでに、まったく別の話になっている。そして勝手に溝ができて、勝手に深くなってしまうのです。

在宅介護は、まさに「船頭多くして、船山にのぼる」

家族がいればそれだけ、それぞれが思う「こうやって介護していきたいな」という介護プランはいくつも存在します。つまり、船頭が多い状態です。みんなばーちゃんのことを考えてよかれと思って話し合っても、伝わってくる情報は尾ひれが付きまくった誤った内容です。話し合いはより混乱し、必要のない確執や言い争い、ケンカの火種になってしまいます。
その結果、わたしが家族のいがみあいの仲裁に入ることになり、余計な体力と気力を使って疲弊するという……。その間、ばーちゃんとじーちゃんはほっとかれてる。まさに本末転倒です。

もういいから腹を割って話そうや

そこで大活躍したのが、グループLINEです。家族全員を一つのグループに登録して、現場で起きていることを同じ熱で伝え、一切尾ひれも付けさせません。グループLINEなら「え、私はそんな話聞いてない」ということにもなりません。

ただ家族全員を巻き込むと共有しにくい話もあるので、メインで家族全員のグループを作り、そのほかにサブ的に「比較的メインで介護する人たちのグループ」も別に作っていました。主な情報は家族全員の方に流して、話し合う。サブは、「今度○日に病院に連れいていくから、その間に買い物お願い!」など、事務的だったりそれぞれ動く際の連絡手段として主に使ったり。
今後のプランを考える相談も、SNSで正しい情報を共有できれば、変に脱線することなくスムーズに話し合いができるようになります。

SNSは、介護する人を守ってくれる有能なツールだった

状況によってSNSを使い分ける。これは介護の現場でもかなり活用できる“神ツール”です!

東北福祉大学福祉心理学科の教授で日本認知症ケア学会の理事、そして『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新書)の著者である加藤伸司先生はこう語ります。

「介護の現場において、ゆずこさんがやったようなSNSの使い方はすごくいいと思いますよ。例え家族でも、認知症の方が『娘や息子に通帳を盗まれた、こんなことをされた』と交番に駆け込んで、事情聴取までされた例も実際にありますから。例えばそれを口頭で一人ひとりに伝えたとしても、信じたいけど『どこまでが本当なんだろう』とどこかモヤモヤも残りますよね。それが噂など尾ひれがついた話が出回ってしまったら、なおさらシコリが残りそうです。

やりきれない話なのですが、家族が新たなストレスの種を作ってしまうこともよくある話です。だから変な誤解や思い込み、尾ひれを避けて、共通の認識が持てるSNSの活用はすごくいいですね。そういったツールがなかった時代は、証拠として写真(フィルムなど)を使ったりもしましたが、家族のバランスを調整するのも今より何倍も大変でした。だから便利なツールは写真でも動画でも、録音でもなんでも取り入れて使った方がいい。僕も賛成です」

中には「世代的にもSNSや動画はよく分からない」と苦手意識を持っている方もいるかもしれませんが、新しいツールは家族関係だけでなく、自分を守る術にもなります。
使い方が分からなかったら、子どもや若い人に聞いちゃってもよし。使えるものは何だって使っちゃうのがゆずこ流介護です!

加藤伸司先生
東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科教授。認知症介護研究・研修仙台センターセンター長。日本認知症ケア学会副理事長。近著に『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新社)、『認知症の人を知る―認知症の人はなにを思い、どのような行動を取るのか』(ワールドプランニング)など

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