「嫁がのけ者にする」と義母が作り話 外を歩きづらい【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
見守り支援を行う梅澤宗一郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の義母(夫の母・79歳)が近所の人に「嫁にのけ者にされている」「家族の誰かが自分のお金を盗んでいる」など、作り話を言いふらしているようなのです。近所の人の目が気になり、外を歩くのがつらいです(50歳・女性)
A.認知症の方に良くある周辺症状(BPSD)の一つで、「妄想」や「物盗られ妄想」という言い方をします。認知症からくる記憶障害や判断力などの低下から一番身近にいる人を犯人扱いしたり、悪口の標的にしたりする傾向があります。
それぞれ理由は違いますが、認知症の方は身近で介護してくれている人のことを良く見ています。してくれたことは忘れてしまっても、感情は残るので、何気ない言葉や態度から「そっけない対応をされた」「のけ者にされている」など、一場面を切り抜いて疎外感や喪失感を感じたことがきっかけになる方も多いです。
そうは言っても、ご家族としては、とても辛いものですよね。
状況を他人に話したところで伝わらないし、仕方がないと思い、ふさぎこみたくなってしまうことでしょう。
でも、この状況をできるだけ早く信頼できる地域の人や専門職(ケアマネジャーなど)に相談し、ご家族がご自身の心の安定を守ることが大切です。
近所の人の目が気になるということですが、もともとお義母さんが築いてきたご近所付き合いを大切にするためにも、少しずつ地域の人に認知症であることを伝えられるといいですね。
ただし、ご家族が「母が作り話をしているんです」と、いきなりお義母さんの話を否定したり、弁解したりしてしまうと、近所の方はどちらが本当のことを言っているのかわからなくなってしまうと思います。例えば「最近母はすぐに忘れてしまったり、今までできていたことができなくなったりしてつらそうなんです」など、家でのお義母さんの状況を伝えれば、近所の方は「だからあんなことを言っていたんだ」と納得してくれるはずです。真実ではないウワサだけが広まるのを避けるためにも、今後のためにも、ぜひ勇気を出して話してみてください。
誰に話したらいいのかわからないという場合は、地域のネットワークを持っている民生委員や町会長といった立場の方に相談してはいかがでしょうか。民生委員には、地域の身近な相談など、地域で必要な支援を行うという役割を担ってくれています。これを機に地域の人たちとつながりをもっておくと、今後もさまざまな場面でフォローしてもらえるかもしれません。
ご家族、そしてお義母さんにとって、家も地域も住みやすくなっていくといいですね。
【まとめ】認知症の人が作り話を言いふらす場合はどうする?
- 認知症の人は、身近な相手を悪く言ってしまう傾向がある
- 近所の人には弁解するのではなく、こちらの状況を伝える
- 地域の人たちとつながりを持つ