認知症の父が他人にお金をあげてしまいます【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
見守り支援を行う梅澤宗一郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.遠方で一人暮らしをする父(80歳)が認知症になりました。自分はしっかりしていると言い張りますが、知らない人にお金をあげたり、必要のないものを大量に買ったり、すぐにお金を使ってしまいます。請求が来ると私が支払いを肩代わりしていますが、もう限界です。(50歳・男性)
A.一人暮らしをされている方の金銭管理の問題は多いですね。私が知っているある認知症の利用者の方は、近所の人に何かを手伝ってもらったお礼にお金を渡していたそうです。近所の人も最初はよかれと思って手伝っていたと思うのですが、だんだんお金をもらうことが目的になってしまったようで、最終的に必要以上の金銭のやり取りが行われたということもありました。
認知症になると判断力が低下して、金銭のやり取りが今までと変わってしまう方がいます。周りからみたら必要のないものを買ってお金を使うわりには、お金がもったいないからと食事や必要なサービスを控える人もいます。
お金に関しては、成年後見制度などを利用すれば、後見人が財産を管理するので本人のムダ遣いを防げるほか、後見人が契約の取り消しをすることもできます。相談者の方が支払いを肩代わりしなければならないということは、少なくなるでしょう。ただし制度上できないこと、費用や事務的な負担が大きいなどの難点もあるので、まずは制度についてよく知ってから検討してみてください。
また、お父さんの生活を考えると、お金の問題だけではなくなってきている段階かもしれません。お金のサポートだけではなく、食事のこと、洗濯のことなど、様々な角度から生活を支える人、医療の面から支える人など、総合的にお父さんをサポートするための制度や社会資源の利用を検討してはいかがでしょうか。
制度を利用するにしても、息子さんの提案を素直に受け入れられない可能性もあります。最初からケアマネジャーなど第三者に間に入ってもらうと、スムーズにいくかもしれませんね。
しかし、一番忘れてはいけないことは、お父さんのプライドを大切にしたサポートを心がけることです。息子や娘が50代、60代になっても、お父さんから見たらいつまでたっても子どもは子どもです。息子や娘からすると、良かれと思って支援を始めても、お父さんの同意や理解が得られていないサポートは自尊心を傷つけ、大切な家族関係に大きな傷を残すことになります。多くの家族に関わって思うことは、家族や人間関係の絆を大切にしていくことが、問題解決の近道になるということです。
【まとめ】認知症の人の金銭管理が心配になったら
- 金銭管理だけでなく、生活の他の部分も困っているサイン
- 家族の対応だけでは困難な場合、介護保険サービスや成年後見制度などの活用も検討
- お父さんのプライドを大切に考える