花水木 明日、あなたが私の名前を忘れても
《介護施設で働く漫画家、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
春夏秋冬、道すがら。 私はその方から、花の名前を教わった。
認知症を深めた方は、忘れがちになる。 だからこそ、その方が心に留めた花の名前は、尊い。
明日、あなたが私の名前を忘れても、 あなたに呼んでいただいた今日は、共に。
私たちは、今日も明日もあって当たり前と勘違いできるほど、能天気でしあわせです。
でも、高齢の方の多くは、
ご自身の近い最期をそっと自覚していらっしゃる。
だからお年を重ね、匂いが感じにくくなった鼻でも「木々の香りが変わった」とよろこび、今日いちにちが発する美しさを知ろうとされます。
私が高齢の方々と一緒にいると、
季節のうつろいをていねいに感じるのは、
そんな理由かもしれません。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》