父に厳しい口調で話すヘルパー 交代してもらえず困ります【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の白石昌世司さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の父(80代)と2人暮らしで、父は訪問介護を利用しています。在宅ワークの日にヘルパーさんが来ていたのですが「さっきも言ったでしょ」「早く食べて」などと父に言っている声が聞こえてきました。事業所に伝えましたがヘルパーの変更は難しいと言われてしまいました(40代・女性)
A.どういう状況でヘルパーからこの言葉が出てきたのかはわかりませんが、どのような状況であれ、やはり専門職としては不適切な対応だといえます。ヘルパーということは、介護福祉士や介護職員実務者研修など介護に関する資格を取得しているはずなので、認知症の方への対応はある程度学んでいるはずです。認知症の中核症状よって、聞いたことを忘れている、どうすればいいのかわからないのに「さっきも言ったでしょ」「早く食べて」と言われても、本人の不安や混乱が強くなるだけです。
認知症に伴うBPSD(行動・心理症状)は周囲の関わり方が影響し、不安によって症状が出ることもありますので、このまま我慢せずに、できるだけ早く対処したほうがいいと思います。ヘルパーの関わり・言葉による影響やストレスからBPSDが出現し、ヘルパーに暴言を吐いてしまい、問題のある利用者だとレッテルを貼られてしまうリスクもあります。相談者がもし、お父さんがこんなふうに言われていることを知らずに、事業所からお父さんの暴言を指摘されたら……と考えると、この状況に気づけてよかったともいえます。
事業所に伝えたとのことですが、ケアマネジャーにも事実を伝えたでしょうか。間にケアマネジャーが入ることで、交渉がスムーズにいくことはありますし、ヘルパーの変更が難しいということであれば、ケアマネジャーが適切な関わりをしてくれそうなほかの事業所を紹介してくれるはずです。
ただし、全国的にホームヘルパーの人材不足は深刻で、地域によってはほかの事業所がないというケースもあると思います。この場合は訪問介護ではなく、デイサービスを利用するなど介護サービスを変更するというのも1つの方法です。お父さんの状況や思いを知ったうえで、ケアマネジャーがお父さんに合ったデイサービスを紹介してくれるはずです。
いずれにしても利用者は介護サービスや介護事業所を選択する権利がありますので、地域にほかの選択肢がないというのは問題です。地域包括支援センターなどに困っている現状を伝えるというのも大事なことです。事業所の契約書類に市区町村の相談窓口が明記されているはずなので、そこに連絡するのもいいでしょう。
お父さんが安心して過ごせるような環境が、早く整えられるといいですね。
【まとめ】認知症の父がヘルパーから不適切な言葉をかけられているのに、事業所からヘルパーの変更は難しいと言われたときには?
- BPSDの悪化にも関わるので、我慢せずにできるだけ早くケアマネジャーに相談する
- ケアマネジャーに相談してもヘルパーの変更が難しければ、ほかの事業所を紹介してもらう、あるいは介護サービスを変更してデイサービスなどを利用する
- 困っている状況を地域包括支援センターなど、市区町村の相談窓口に伝える
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫