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一人暮らしの母が認知症に 介護離職したいが兄弟が反対【お悩み相談室】

思い悩む男性、Getty Images
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認知症介護指導者の上村尚之さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.遠方で一人暮らしの母(80代)が認知症となり、仕事をやめて実家で母の介護をしようと思っています。しかしケアマネジャーや兄弟には「仕事をやめてまですることはない」と反対されています。私としては母と過ごせる時間は長くはないので、なるべく一緒にいたいです(50代・男性)

A.結論を先に言いますと、私も仕事をやめて介護をするのは、やめたほうがいいと思います。これまで同じような思いで仕事をやめて介護に専念されるご家族をみてきましたが、多くの方が1カ月くらい経つと壁にぶつかっているようです。それだけ介護に集中するというのは、心身ともに大変なことなのです。

とはいえ、相談者のお気持ちもよくわかります。お母さんと過ごしたいという今の気持ちは抑えられないと思うので、まずは仕事をやめずに介護休業を利用してお母さんを介護するのはいかがでしょうか。介護休業は最長約3カ月間とることができます。

その3カ月間で考えてほしいのはまず、お母さんは息子である相談者にどんな生活を送ってほしいと思っているのかを想像することです。多くの親は「自分のために仕事をやめてほしい」とは思わないのではないでしょうか。認知症の程度によっては、直接聞いてみてもいいと思いますが、言葉通りに受け取るだけではなく、これまでのお母さんの言動から考えてみることも大事なことです。

実際に仕事をやめて介護に専念した人たちの介護体験談を読んだり、聞いたりすることもおすすめです。実家の近くにある認知症カフェなどでもそういった体験談を聞けるかもしれません。なるべく相談者と同じ性別、年代の人の体験談が参考になるのではないでしょうか。介護退職したあとはどうなったのか、介護が終わったあとはどうしたのか。知っておいたほうがいいと思います。

もう1つ、介護休業中にやることとしては、もしお母さんに一人暮らしを続けてもらうことになった場合、どのような介護保険サービスや自治体のサービスを利用できるのかを確認しておくことです。ケアマネジャーに相談すれば、今のお母さんが一人暮らしを続けられるようなケアプランを組んでくれるはずです。介護保険サービスについては、たとえ相談者が介護に専念することになったとしても利用したほうがいいので、理解を深めておくといいと思います。

介護休業中に介護生活を体験するだけではなく、さまざまな情報をインプットして、改めて今後について検討してはいかがでしょうか。そのうえで出した結論であれば、ご兄弟も納得してくれるはずです。

【まとめ】仕事をやめて認知症の母の介護をしたいが、ケアマネジャーや兄弟に反対されているときには?

  • いきなり仕事をやめるのではなく、介護休業を利用して一定期間介護に専念してから改めて検討する
  • 介護休業中にお母さんが息子にどのように生活してほしいと思っているのかを考える
  • 介護保険サービスや自治体のサービスについて、よく理解しておく

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫

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