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副業ヘルパー

ヘルパー利用は20分の短時間もあり ピンポイント活用で利便性アップ

デイサービスの送り出しで、お荷物の確認を
デイサービスの送り出しで、お荷物の確認を

新卒で入社した出版社で、書籍の編集者一筋25年。12万部のベストセラーとなった『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子)などを手がけた編集者が、40代半ばを目前にして、副業として訪問介護のヘルパーを始めました。今回は、経験を積んでいく中で気づいたヘルパーの働き方の特徴や傾向についてです。

20分で何ができる?

初めての訪問先としてNさん宅に伺うようになったのが、2021年の4月。あれから3年以上経ち、その間に10軒ほどのお宅をヘルパーとして担当しました。3年間ずっと通い続けて、すっかり気心の知れた方がいます。一方で、たった1回の訪問で終わってしまった方もいます。私が担当になった直後、高齢者施設へ入所されたのでした。
高齢者施設への入所や病院での長期入院、あるいは残念ながら亡くなるなど、お客様のご事情によりサービス終了となることは少なくありません。なにぶん皆さんご高齢なので、年月とともに訪問先は移り変わっていきます。

そうして働く中で気づいたのが、「30分という短い単位のサービスが案外多くある」ということです。30分どころか、20分のサービスに入っていたときもあります。
20分の超短時間で、いったいどんなサービスができるの?と思われる方もいるかもしれません。私が担当したお宅の場合の例では、デイサービスの送り出しでした。車椅子を使われている方で、外に出る際には玄関に簡易スロープを設置する必要があります。朝食やトイレはご自分で済まされており、ヘルパーの仕事はスロープの設置(これがなかなか重い…)と、車椅子を押して玄関の外にお連れすること。20分で十分すぎる時間なのでした。けれど、ヘルパーの存在がなければ、お客様は外出が難しく、自宅に閉じこもることが多くなってしまいます。大切なヘルパーの仕事だと思います。

デイサービス送り出しのヘルパー利用はとても多い印象

デイサービスの送り出し(とお迎え)は、とても利用の多いサービスのように思います。訪問介護で行われる介護は、おむつ交換などの「これぞ介護」というものだけでなく、とても幅が広いのですね。同時に、サービス内容に合わせて、サービス提供時間の長さも変わってきます。提供するサービスが少なければ、時間も短くなるのです。
また、毎日デイサービスに行かれる方でも、毎度ヘルパーが送り出しをするわけではなく、ピンポイントでサービス利用するというケースもあります。具体的には、認知症の症状が最近出始めたという方で、普段はデイサービスの迎えの車が来て、玄関チャイムを鳴らされれば、問題なく外に出ることができるのだけれど、入浴がある日に、着替えの準備を忘れることが多くなったという方がいました。そこで「入浴のある日だけヘルパーさんに入ってもらい、荷物の確認をしてもらいたい…」とのご要望が出てきたのです。
デイサービスの送り迎えの車は、あちこちに回らないといけないので、1軒のお宅に長く時間をかけられません。まして、部屋の中に入って準備を手伝うことはできないでしょう。車に乗っているスタッフはドライバーさん1人のこともあり、同乗する他の利用者さんたちを置いて、車を長い間離れるわけにもいきません。そこで、ヘルパーの出番となるのです。

ご体調確認という重要な任務も含まれる

体温の計測はヘルパーの必須仕事
体温の計測はヘルパーの必須仕事

たった20分や30分の訪問ですが、この短い時間でもヘルパーが入ること自体、非常に意味があるのではないかと思っています。
ヘルパーは単にスロープを設置する、荷物を準備するというだけでなく、ご本人の様子、健康状態を確認します。むしろそれが第一の仕事なのです。
どのサービスに入っても、まず体温を測るのは必須であり、ときに血圧を計測したりもします。ご体調を伺い、何か気になること(今朝はあまり食事をとれていない、体に痛いところがあるなど)があれば、デイサービスに共有します。脱水症状になりやすい夏場には、水分補給を促すことも重要な役割です。また、認知症の方などで、デイサービスへの行き渋りがあるとき、ヘルパーが上手に気持ちを乗せる役目を果たすこともあります。デイサービスに行く前の「ワンクッション」として、ヘルパーに接することで、気持ちが自然と切り替わる側面もあるでしょう。
このような、ちょっとした、しかしこまやかなケアが、ご本人のQOL(生活の質)を上げ、心穏やかに日々を過ごすことにつながっているように思います。

ちなみに、デイサービスの送り出しでサービスに入る場合、朝食の準備や排泄(はいせつ)介助なども含まれるケースは、もちろんあります。そのときはサービス提供時間も1時間など長くなります。訪問介護の利用のしかたは本当にお客様によってそれぞれです。

ご家族の負担を軽くするため、おむつ交換に1日数回ヘルパーが入る

その他、30分の短時間のサービスとしては、おむつ交換と水分補給だけ、というお宅に通っていたことがありました。同居するご家族の介護負担が重く、おむつ交換はヘルパーがすべて請け負うことになっており、ヘルパーが交代で1日数回入るという形でした。おむつ交換だけなら20分もかからないのですが、飲み込みに介助が必要な方でもあったので、残りの時間に飲み物を飲んでいただきました。

訪問介護は1時間や2時間のまとまった時間に限らず、20分や30分など細切れの時間で利用することも可能。一度に1時間まとめて朝に入れるより、30分ずつ朝と夕の2回に分けたいというケースにも対応できます。組み合わせ方次第で、訪問介護の利便性は広がっていくということを、みなさんに知ってもらえたらいいなぁと思っています。

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