特養で暮らす母 同室の入居者の怒鳴り声を怖がります【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.母(80代)は現在特養に入居しています。同室の入居者がいつも介護士の方を怒鳴りつけていて、母は「怖い怖い」と言ってかなりストレスを感じているようです。金銭的に個室は難しく、ほかの部屋も満床のようです。我慢させるしかないのでしょうか。(60代・男性)
A.私は長年特養で働いていますが、多床室と呼ばれる4人部屋や6人部屋では、こうした人間関係のトラブルはどうしても起こってしまいます。相談者は、施設側にどの程度お母さんの状況や要望を話しているでしょうか。この問題は、入居者やそのご家族ではなく、本来施設側が解決しなければならないことです。特養は、単に介護をすることだけが目的ではなく、利用者の自立支援を重視しています。つまり、本人の気持ちを尊重し、本人の希望に添って支援していくことが基本です。お母さんは「このままでは生活しづらい」というパスを出しているわけですから、それに応えるのが施設側の使命です。
満床ということですが、その場合でもいくつか手立てはあります。例えば夜間に叫ぶような入居者がいて、同室の入居者から「眠れない」という苦情があった場合、耳がかなり遠くなって周囲の騒音が気にならないような入居者と居室を交換する、といった対応をとることがあります。
場合によっては、個室を希望してもいいのではないでしょうか。居室を移動できないのは施設側の事情なので、施設によっては個室が空いてさえいれば一時的な措置として追加料金なしで対応するケースもあります。
また、施設側としては、入居者が怒鳴っている状況を改善する必要もあります。怒鳴る人だから仕方ないではなく、怒鳴るのはケアに対して、何かしら納得がいかないというメッセージだと考えることもできるので、原因を考えて、怒鳴る入居者にとってもプラスの状況をつくるべきなのです。
すぐには対応が難しいという場合は、プライベートカーテンをしっかり閉める、イヤホンをつけてテレビを見てもらうなど、怖いと感じる場面をなるべく目にせず、耳にしないといった環境づくりはできると思います。
施設側が全く対応をしてくれなければ、ほかの施設を申し込むこともできるので、今いる特養に固執することはないと思います。
理由があって居室の移動を希望することは悪いことではないので、ぜひ施設側にしっかり状況や要望を伝えてほしいと思います。
【まとめ】特養に入居中の母。同室の入居者がいつも介護士を怒鳴っていて母がストレスを感じているときには?
- 施設にお母さんの状況や要望を伝えて、居室の移動や個室の利用など、怒鳴る入居者と居室を別にするような対応をしてもらう
- すぐに対応してもらうのが難しい場合は、怒鳴っている場面をお母さんがなるべく目にしたり耳にしたりしないような環境をつくる
- 全く対応してもらえない場合は、ほかの施設に移ることを検討する
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫