海と風がおりなす癒やしと明日への希望
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
ゴールデンウィークも真っただ中の日のこと、
急きょ、家族で小田原に日帰りで出かけることになりました。
小田原城に向かう途中で販売していた湘南ゴールド(神奈川県が開発したミカン)の飲むゼリーをいただきながら、子どもの頃の胸躍る感覚で散策をしていました。
お祭りをしててにぎやかな小田原城を一周しながら散歩をしていると、
たまたま前日、Facebookに「海に行きたいな」という内容の2年前投稿が上がってきたことを思い出しました。
家族に「海に行ってみたい」と伝えると、
小田原城から10分ほど歩いたところの海岸まで散歩することになりました。
この先に海岸があるんだろうか…。
住宅街を歩きながら、突然見えた光景は、真っ青なきれいな大海原でした。
最近、私は認知症の当事者発信活動のための移動中に、車窓から海を見ることはありましたが、海辺まで足を運ぶのは何年ぶりかわからないぐらいでした。
そうしたこともあり、私は、年がいもなくはしゃいでいたと思います。
夫は、そうした様子を動画に撮影し
帰宅してからも何度も見ていました。
「この動画は消さないでね」
そう言って、画面の中で映る私のその時の表情、楽しかった思い出を見ながら、
夫なりに何を感じていたのでしょうか…。
そんな夫の姿を見ていて、私には感じる思いがありました。
砂浜で裸足になってはしゃぐ子どもたち。
さすがに私は、少しためらい靴は脱がなかったものの、
波打ち際まで足を進めては、波から逃げることを繰り返していました。
それはまるで、波とじゃれ合っているかのような動画でもありました。
波の音と風が織りなすメロディーは魔法のような時間。
お互いに久しぶりに仕事から離れ、ゆっくりとした時間が流れました。
海は私たち夫婦にとっても大切な場所であることを思い出しました。
子育てのことで疲れ悩んでいるとき。
認知症の診断を受けて落ち込んでいたとき。
仕事で疲れているであろう夫が、帰宅後に、真っ暗な湘南の海まで連れて行ってくれたのです。
「助手席で寝てればいいよ」。そう言って。
真っ暗な海は月に照らされ、月光がひとつの道しるべのように、
私たち夫婦に静かな癒やしと明日への希望を与えてくれました。
私たち夫婦にとって、
海は特別な景色だったんだろうなぁ。
ゴールデンウィークという長いおやすみの間には、認知症の仲間たちからメッセージが続きました。
私たちは長い休みになるとどこか不安になってしまいがちなのかもしれません。
私自身も診断から数年は、強い不安が押し寄せてくることがありました。
そうした不安に対しても、地域や社会で支えていける仕組みを考えることも大切な課題だと改めて感じました。